ブラックドラゴンが眼前に迫って来る。
やはりその巨体を目の当たりにするとあまりの巨大さに足がすくみそうになる。
でも。
(最初から気合い負けするな!体は小さくても、わたしはゼイレームを護る騎士を目指す者。王国の盾になる守護者!たとえ身体が裂かれようと、最後まで諦めない!!)
自分を叱咤し、鼓舞した。震える手足に力を込め、ドラゴンを睨みつける。
「来るなら、来い!わたしは、ゼイレームの騎士だ!!」
「ヴアアアオオオ!!」
ブラックドラゴンの右腕が繰り出され、わたしに向かって伸びてくる。当然わたしは避けてその懐に飛び込むと、模造剣を振るった。
「はああっ!」
狙うは、腹部。
ドラゴンの鱗は途轍もなく硬く、どんな武器も通さない強靭さを誇る。
けれども、ただ1か所。弱点と言える部分がある。
お父様の小型のドラゴンの討伐経験から教えて頂いた。
(スピードに乗せて、正確に突く!)
この1年、誰よりも努力してきた自負はある。スピードを活かした攻撃。ドラゴンの動きよりも速く、より的確に。
(見えた…!!)
脇構えの模造剣を振るった瞬間、ドラゴンの左手に阻まれ、そのまま手ひらで払われた。
「あっ!」
身体が森へ向かってふっ飛ばされたけれど、咄嗟に受け身を取り、灌木がクッションになってなんとか最小限のダメージで済んだ。
すぐさま立ち上がったわたしは、ある予感があった。
(邪魔ならば潰したり爪で裂くこともできたのにしなかった……?ならば、もしや……)



