「ヴァオオオオオ!」
森を走っている最中、やはりブラックドラゴンは追いついてきて、咆哮が辺りに響いた。
ただ、やはりぼんやりした気配しか追えて無いのか、周回しているような羽ばたきの音が聞こえる。おそらく、マリア王女に着けたメダリオンの魔術の効果もあるんだろう。
(あの木を右に…それから、あの岩で左!)
従騎士として訓練を始めて1年だけれども、実際にはレスター王子の婚約者時代から密かに訓練や探索をしてきた。だから、この辺りの地形は熟知している。
一番近い洞穴への最短ルートで、さらに姿が隠しやすい場所を選んで走る。パートナーのアクアも走り慣れたものだった。
同期の従騎士のフランクスには崖上り訓練時に洞穴の存在は教えてあるし、メダリオンには追跡の魔術が掛けられている。それらを組み合わせれば、皆が後を追いかけて来られるだろう。
万が一、わたしがドラゴンと対峙して倒れても、マリア王女が洞穴で無事ならばいい。
(絶対……命を掛けてもマリア王女はお守りせねば!でなければ…騎士になるなど、夢のまた夢だ!!)
マリア王女が王族だからというだけでない。相手が身分血筋関係なく、人ひとり護れる力量が無ければ、騎士の資格などない。まだ従騎士だからというのは甘えだ。何が何でも、全力で護る!!固い決意を胸に走って走って……ようやく洞穴が見えてきた。



