「確かにその方が良さそうだ。ミリュエールくん、済まないがマリア殿下を頼む」
「はい!命に代えても必ず御守りいたします」
カイルさんが苦渋の表情でわたしにマリア王女を託して下さった。わたしの前にマリア王女を座らせると、すぐに「行け!」とアクアのお尻を叩く。それに応えたアクアは、弾けるように猛スピードで走り始めた。
(できたら頑丈な建築物の中へ…でも、人がいる場所では確実に被害が出てしまう!)
だからといって何もない広い場所ではドラゴンの思う壺。マリア王女を安全に保護出来る場所は……と、考えてハッと思いついた。
(そうだ…!そこがあった)
崖上り訓練で使われる絶壁。周囲はわりと深い森林で覆われているけど、たまに洞穴がある。
巨体のドラゴンが入れない小さな洞穴も、いくつかあったはず。
万が一の非常時のことを考えて、事前に有毒なガス等の発生が無いか確認はしたし、崩落や落盤の可能性が無い頑丈な洞穴もいくつか見つけておいた。物資や水や食料も隠してあるから、何日かは過ごせるはずだ。
「マリア殿下、しっかりお捕まりください!飛ばします!!」
「わかった!」
マリア王女はアクアの首にギュッとしがみつき、わたしはアクアに頼んだ。
「アクア、妊娠中なのにごめんね。できるだけ急いであの洞穴に行って!」
「ヒヒヒヒーン!」
わかった、と言わんばかりにアクアはさらにスピードアップし、森へ向かう。密集した木々が空から姿を隠してくれるはず。
木々の手入れはよくされているから、アクアの走りを妨げるものは無かった。



