【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「あ、う……」

わたしが今までにないほどのキツイ声音で叱責すると、レスター王子はブルブルと剣を震わせながら口をパクパクさせていた。

サッ、とわたしの前に誰かの腕が出され、それ以上言葉を出すなと言われたように思えて口をつぐむ。カツン、とやけに大きく響いた足音はアスター王子のもので、彼はわたしを斜め後ろに庇うように立ちふさがった。

「ミリィ、もういい。あんなやつには関わるな」
「なっ…なんだと!?ボクがあんなやつとは……ひっ!?」

再び相対した弟王子の言葉にレスター王子は憤慨するけど……なぜか、アスター王子の顔を見た瞬間に顔から血の気が引いてガタガタ震えだした。

「あんなやつ呼び程度で済んで、感謝してほしいものですね、兄上?そろそろ近衛騎士と近衛兵が駆けつける頃合いですが…さて?私はどう証言しましょうかね…禁中でもある王宮で、許可なく抜刀した……しかも王族相手に。いくらあなたが同じ王族でも、罪に問われるのは間違いありませんよ?」

……なんだろう?

こんなアスター王子の声は、聴いたことがない。

この1年寝食をともにして仕えてきたのに、こんなふうに研ぎ澄まされた剥き身の剣のような……ぞっとする冷たさと凄みを感じた。