「金と地位──貴方達が望むものを、貴方達に贈ります」

 ディオさんの片目をまっすぐと見つめて、私は言い放つ。
 私の言葉に、ディオさん達は目を丸くして固まっていた。……どこの誰とも知らない私に急にこんな事を言われても信じられないだろう。だけど、今の私にはこう言う事しか出来ないのだ。

「……金はともかく、地位は今すぐ与えられる訳ではありません。でもいつか必ず、貴方達の望むままに地位を与えると約束します」

 剣を片手に髪を揺らしながら立ち上がり、私は彼等に向けて手を差し伸べる。

「絶対に後悔はさせません。だからどうか、私を信じてください。私の手を取り、共に来てください。貴方達の望みは──私が、絶対に叶えてみせます」

 その言葉を最後に、この空間は水を打ったように静かになった。
 時間が少しずつ、少しずつ、過ぎていく。長いように感じたほんの一分の間、ディオさんが私の手を取ってくれる事だけを信じて待ち続けていた。
 ……そして、ついにその時が来た。

「…………ガキにそんな事を約束されるなんてな……最後にもう一ついいか?」
「はい」
「何で俺達なんだ?」

 ディオさんがニヒルな笑みを浮かべながらこちらを見上げる。

「だって、ディオさん達は子供達の為に日々頑張っているんでしょう? そんな真っ直ぐな志を持つお強い方達が目の前にいて、助力を仰がないなんて選択肢はありませんよ」

 理由が何であれ、こうして治安の悪い裏稼業の用心棒をやれるような人達なんだから、きっとかなり強いに決まっている。戦力と出来れば相当心強い事だろう。
 そう下心満載で私は言ったのだが、予想以上にその言葉はディオさん達に効いたようで……。

「……っはぁ、ここまで言われて断れる訳ねぇだろ……エリニティ、バドール、お前達もいいな?」
「こんな可愛い女の子にここまで言われちゃあね! ここで断ったら男が廃るってもんだ!」
「アンタが決めたのなら俺はそれに従う」

 ディオさんの言葉に、エリニティと呼ばれた猫目の男とバドールと呼ばれた筋骨隆々の男が首肯した。
 そしてディオさんが、

「……そう言う訳なんで。馬鹿な俺達はあんたみたいなガキの言う事でも、真に受けて信じさせて貰うぜ」

 ニッと口角を上げて私の手を取った。