『こんな所で何をしているの? 危ないよ!』

 ミシェルちゃんはメイシアに話しかけた。メイシアはそれに、

『──大丈夫』

 と答えて、そして炎を消した。メイシアは男達が死なない程度に燃やすつもりだった。罪は償わせなければならない。その為にも殺す訳にはいかなかった。
 だからこそ、ギリギリ死なない段階で炎を消したのだ。
 ミシェルちゃんはあれがメイシアの仕業だとは気づかなかったが、フリードルは違った。フリードルのルートではその事についてフリードルが言及し、メイシアはそれを認める。
 ここまでが本編シナリオ内で語られた事。ここから先はフリードルのSSのうちの一つ、【魔女狩り】とメイシアのSS【赤い瞳】から抜粋する。
 そして、フリードルのルートでのみメイシアは投獄される。騒ぎを起こした男達を捕らえる事に貢献したとは言え、多くの人間を燃やしたのだ。……罪に問われても仕方が無い。
 そして突きつけられる。処刑されるか、延焼の魔眼を差し出すか……その二択を。
 メイシアは後者を拒んだ。これの所為で苦しんで来たのは確かだが、メイシアは大好きな母親と同じこの眼を大事にしていた。
 その為、後者を拒み秘密裏に処刑される道を選んだ──が、しかし。彼女は処刑される前日に自殺した。

『……延焼の魔眼が魔法を使わずとも火を生み出せると、何故誰も知らなかったんだ』

 フリードルの言葉に答えられる者はいなかった。
 メイシアは魔法封じの牢獄に入れられていたにも関わらず、自身を燃やして自殺した。
 ……処刑されてしまえば死体がどう扱われるか分からない。死んだ後この魔眼を利用されるぐらいならこの魔眼諸共灰になってやる……そう、たった十四歳程の少女が決意し、自ら業火に身を投じた──。
 真夜中に行われた自殺。その業火はメイシアが死んだ後もその膨大な魔力を燃料に燃え続けた。衛兵がそれに気づき駆けつけた時にはメイシアの体は完全に焼き尽くされ、魔眼も原型を留めていなかった……。
 その場に残ったものは、メイシアの膨大な魔力を抑制していた魔導具の義手と、少し前まで人だった塊だけ。
 一番ヤバいと思ったのは、これを受けてなおフリードルが何も感じていない事だった。メイシアは自分の所為で自殺したようなものなのに……フリードルはただ、『貴重な魔眼が得られず残念だ』としか思わなかったのだ。
 これには殺意が湧いた。私がとことんフリードルを嫌っている理由の一つでもある。
 ……それでも世の中ではここまでの無情さとミシェルちゃんへの甘さのギャップが最高! と騒がれていたけど。理解出来ねぇ……と思っていたのはここだけの秘密だ。
 メイシアはアミレスと同じでフリードルによって殺されてしまうので、勝手に仲間意識を感じている。
 元々メイシアの事は可愛いしいい子だしで好きだったから、私は今世でもメイシアをフリードルの手から守りたいと思っている。
 ……というか、メイシアがここにいる事によりこの世界が二作目の世界である可能性が高まったんだが、どうしよう。ミシェルちゃんがフリードルのルートに進んだら私もメイシアもバッドエンド確定じゃない……!?