檻の中を見渡す。薄暗いからかぼんやりと影が見えるだけなんだが、ここには私以外に子供が四人いる。
 この子達も……他の檻にいる子達も全員今夜中に逃がしてあげないと。

「……もう監視とかいないよね?」

 ボソッと呟きながら、私は全反射を解除して剣を出す。それには他の子達も驚いたようで、

「な、何してるの……?」

 女の子が恐る恐るそう尋ねてくる。私からは、暗くて人影しか見えないのだけれど、少しだけ届く通路の光で、あの子達からは私の姿が見えているのかもしれない。

「──あのね、私はここにいる皆を助けに来たの」

 そうだ、私はこの子達を助けに来た。そして諸悪の根源を滅する為に来た。最初こそは他人に任せようとしていたけれど、色々と知ってしまった以上無視できない。

「たす、けに? あたし達を?」
「ええそうよ」
「あなた一人で?」
「……残念ながら私には仲間がいなくて」

 そうやって、暗がりから聞こえて来る声と会話を繰り返していると。

「……ふざけないで、あなた一人で何ができるって言うの? 私達と歳も変わらなさそうなあなたが、大人の男達相手に何ができるって言うのよ! 無駄に期待させないで!!」

 影が一つ動き出し、女の子が叫びながら近寄ってきた。薄らと見える女の子の姿は……落ち着いた赤褐色の長髪で、なんだか大人びたものだった。
 彼女は私の両肩を掴み、必死の形相で迫ってくる。

「それにっ、あなたみたいな可愛い子の方が早くどこかの変態に買われちゃうのよ!? そこの子だって明日の朝には……!」

 彼女の視線の方向には、ずっと静かに俯いている女の子がいた。最初に声をかけてきた女の子とも違う子。

「メイシアからも何か言いなさいよ! この子、馬鹿みたいな事言ってるのよ!」

 赤褐色の女の子の言葉に、私は一瞬思考を止めた。
 そして振り払うように彼女の手を退かして、メイシアと呼ばれた少女の元に駆け寄る。
 失礼します、と言いながら俯く彼女の顔を上げて、その顔を至近距離で見つめて私は確信した。
 まさかこんな所で会う事になるなんて……だって、この子は──。

「……メイシア・シャンパージュ嬢、ですよね」