「──という訳で。只今より作戦名【自分から捕まりにいっちゃおう作戦】を決行します」

 日も沈み辺りが暗くなってきた頃合にて。
 頭を使う事があまり得意ではない私が必死に考えた末に出た結論もとい作戦。それが【自分から捕まりにいっちゃおう作戦】なのだ。
 読んで字のごとく、奴隷商の本拠地をつきとめるなら商品としてそこに行くのが一番手っ取り早いんだし、自分から商品になりに行こうぜ! という作戦だ。
 そりゃあ勿論、シルフにも大反対されましたとも。
 でもここまで準備したんだからやるっきゃないよね。

「……あのさぁ、アミィ。どうして一旦皇宮に戻ったのにまた街に出てるの? しかもそこら辺の服屋で適当な服買ったりして……」

 猫シルフが肩に乗りながらそう聞いてくる。その辺りの細かい話はしてなかったなと思い出し、私は説明する。

「一旦皇宮に戻ったのは荷物を置きにいきたかったのと、ハイラを安心させる為よ。彼女はとても心配性だから少しでも私の姿が見えないと大事にしかねないから……一旦顔を見せておく必要があったのよ。もう一度抜け出す為にもね」

 ぱちりと猫シルフに向けてウインクをする。
 シルフは私の言葉に納得したように、あぁ……と息をもらして言う。

「だから『今日はもう休む』って言ったんだ……」
「ふふ、ハイラは私が休むと言った後は呼ばない限り部屋に来ないからね。それに頼み事もしておいたから明日の朝までに全て片付けたら万事解決よ!」

 そう。皇宮に戻った際にハイラさんに少し調べて欲しい事があると頼み事をしたのだ。きっと今頃それらについて調べてくれている事だろう。
 なので、今私が皇宮を抜け出した事に気づく人はいない。朝ハイラさんが起こしに来るまでに全てを終わらせておけばバレる事も無いし、皆幸せになれる。

「……じゃあその服は? わざわざその服に着替えてから皇宮を抜け出して来たよね」

 私は今、どこにでもあるような普通の服に身を包んでいる。街にいる女の子が着ているようなそんな服。
 これは皇宮に戻る前に買って持ち帰り、そして着替えて来た服だ。まぁ、それなりに可愛いんじゃないか。
 考えたのだ……どれだけアミレスが美少女でも、服装があれじゃあ、そう簡単に商品として認められないのではと。
 なので、作戦決行にあたって普通の町娘風の服装に着替えてみたのだ。ちなみに、ポケットには例の煙幕玉が入っている。
 今回はもうローブも羽織っていない。この服装に愛剣とこの身一つ……と煙幕玉で抜け出して来た。
 ……そんな簡単に城から抜け出せるものなのかと聞かれてしまいそうだけど、私も驚いたのよ。こんな簡単に抜け出せるとは思ってなかった。
 ちょっと魔法を使っただけで簡単に抜け出せるなんてこの城の警備ちょっとザルだな……と思ったのはここだけの秘密だ。

「この服装の方が普通の女の子みたいでしょ? 多分、こっちの方が狙われやすくなると思って」

 ひらりと服の裾を舞わせていると。
 ダンッ! とまるで机を叩いたような音が聞こえて来て、

「っ、だから! どうしてそんな事を進んでやるんだ! 凄く危ない事なんだよ?! 分かってるの!?」

 それに続くようにシルフが叫んだ。
 突然の大声に私は肩を少し跳ねさせた。驚いたのだ、シルフがこんな風に叫ぶ事なんて……今まで無かったから。