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「ねぇ、相談があるんだけど」

 アミレスが眠りについた後。自然と談話室に集まっていた面々は、おもむろに切り出したシュヴァルツへと注目を集めた。
 その注目を一身に受け、シュヴァルツは提案する。

「皆どうせ同じ気持ちだろうけど──……明日、おねぇちゃんの為のパーティーを開こう。大規模には無理でも、せめてこの東宮内だけでもやろうよ」

 時刻にして二十二時過ぎ。アミレスの誕生日まで残り二時間しかなく、アミレスが目覚めるまでは七時間も無い。
 そんな限られた時間で一国の王女のパーティーの準備など、ぶっちゃけた話、まあほぼ確実に無理だろう。だがしかし、そうと分かっていても彼等にはこれに臨む理由と必要があった。

「そうだね、シュヴァルツの言う通りだ。今なら皇太子の誕生パーティーという隠れ蓑もあるし、東宮内でパーティーを開いても最悪誤魔化せる。何より、ボクはあの子のあんな表情は見たくない」
「そんな気はしてたけど、やっぱ姫さんは毎年我慢してたんだなァ……平気そうに言ってたけど、やっぱりどこか悲しそうな顔してたし」

 シルフとエンヴィーがまず初めに同意した。ハイラがいない今、この中で誰よりも長くアミレスと共に過ごし彼女の誕生日を祝って来たこの二体は、夕食時のアミレスの空元気な様子を脳裏に思い浮かべていた。
 毎年、アミレスの誕生日はハイラの手作りケーキとちょっと豪勢な料理、そしてハイラとシルフとエンヴィーからの誕生日プレゼントというささやかなレパートリーで祝っていた。
 なお、昨年の十二歳の誕生日はそこにマクベスタも加わり、彼女に贈られる誕生日プレゼントの個数が一つ増えていた。
 誰にも気づかれないような、密かな誕生日。アミレスは全く気にしていないとばかりに毎年明るく振舞っていたが、実はそうではなかったのだと知り、シルフ達は項垂れていた。
 ──アミレスにあのような悲しげな顔をさせたくない。その一心で、彼等は一つとなるのだ。

「皇后陛下を弔う事も大事ですが、それがアミレス様を蔑ろにする理由にはなりません。なのでわたしは、シュヴァルツ君の意見に大いに賛成です」
「オレもだ。国がそれを許さずとも、オレ達で勝手にやる分には問題無いだろう」

 続いて、メイシアとマクベスタが賛成する。
 マクベスタの彼らしからぬ物言いに、エンヴィーは「言うようになったじゃねぇーか、マクベスタ」とニヤリと笑った。