『爵位簒奪なんて馬鹿げた事をした子供に色々と分からせてやろうと思ってたんだが……これでは出来ないじゃないか。流石の僕も、こんな訳アリな子供に強く出る事は出来ないさ』
『そもそもとして、その考えが間違いであると何故お前は気づかないんだオリベラウズ』
『ふはっ、理由は何であれ……この食事会を開き私を誘ってくれた事は感謝するさ、オリベラウズ侯。何故か私はこう言った場に呼ばれないからな、いつも。こんなにも私は人と関わる事が好きだというのに』
『アルブロイト公は一回自分の立場ってものを見直してみたらいいと思う』
『帝国唯一の公爵家当主はそう誘えないだろう、普通の貴族なら』
『えぇ? この肩書きはそんなに壁と感じるのか。私はこんなにもいつでも誘ってどうぞ、と両手を広げているのに?』
『『当たり前だろ』』

 ハハハ、と談笑するオリベラウズ侯爵とフューラゼ侯爵とアルブロイト公爵。錚々たる面々なのだが、会話がやけに軽いというか……とても、仲が良いように見える。
 そう言えば、父がこの有力家門同士の交流を疎ましく思っていたが……これが原因か? 確かにこの雰囲気は父に合わないだろう。

 食事会が終わる頃にはオリベラウズ侯爵とフューラゼ侯爵とアルブロイト公爵にも、新たな侯爵家当主として認めていただけた。更には、『これから暫くは大変だろうが、精々頑張ってくれ』と激励の言葉まで貰えた。
 そんな尊敬すべき先達に感謝を込めて謝辞を述べ、俺は当主として果たすべき務めを果たす為に邸に戻った。