『叙爵式は一週間後に執り行う。貴様に、帝国の剣としての働きはさほど期待しておらぬ。ならばせめて、奪ってまで手に入れた侯爵家当主としての務めに精々励むといい。後はお前の采配に任せよう、ケイリオル』

 そう言い残して、皇帝陛下は一人で退出された。
 ……よく、分からないが。これは俺が侯爵になるのを認められた……と言う事で良いのだろうか。だって皇帝陛下は叙爵式は一週間後って仰られたし。

 いやでも本当に? 何にもなくて大丈夫なのか? 流石に何かしらの罰が下されると思ってたんだが。
 と、頭を悩ませていた時。ケイリオル卿が『ごほんっ』と口元に手を当ててわざとらしく咳払いをして。

『えー、では。アランバルト・ドロシー・ランディグランジュが次期当主で正式決定と。皆さん異論はありませんね?』
『アルブロイト、賛成だ。陛下の決定に異を唱える訳がなかろう』
『テンディジェルも異論は無い。もう会合終わったよな、帰っていいか?』
『フューラゼ、賛成』
『オリベラウズも異論は無いって事で。ただこの若いのが当主としてやっていけるのか、僕としては気になる所だがね』
『ララルスも異論無しだ』

 各家門の当主達が次々に発言する。これにより俺はこれらの家門の当主達からも、一応は、当主として認められた事になるのだろう。
 その一週間後、本当に叙爵式が執り行われた。めでたく俺はランディグランジュ家当主となり、侯爵になって早々、何故か有力家門同士の交流が目的の食事会に呼ばれた。

 参加者はアルブロイト公爵とフューラゼ侯爵とオリベラウズ侯爵。テンディジェル大公とララルス侯爵とシャンパージュ伯爵は諸用で不参加らしい。
 その食事会の席にて、俺は一回りも二回りも歳の離れた侯爵達にじとーっとした目で問い詰められていた。

『会合の時聞きそびれていたんだが──……お前が爵位簒奪をするに至った本当の訳というものを、聞かせてもらおうか』

 オリベラウズ侯爵の放つ圧が、言い逃れする事を許さない。
 あの日、俺は確かに嘘偽り無く話した。ただ……イリオーデの事は完璧に伏せて。こんなのバレたら処罰ものだと思っていたんだが、バレていたなんて。