ランディグランジュ侯爵家爵位簒奪事件から二週間。
 俺は、残りの侯爵家三家門の当主達と公爵と大公に加え、皇帝陛下とその側近の方達の御前にて、処刑台に立つ罪人のような気分に陥っていた。
 ……いや、実際には同じようなものなのだが。

『おい、シャンパージュはどうした』
『それが……本当に重大な取引があるとかで、緊急の召喚には応じませんでした。ですが、まぁ、シャンパージュ家の取引成功は帝国の繁栄に繋がりますし、特別に見逃してやりましょうよ』
『チッ……お前は本当に甘いな』
『無闇矢鱈とシャンパージュ家を罰する訳にもいきませんのでね』

 皇帝陛下と側近の方が交わすそれを聞き、シャンパージュ伯爵家の特例っぷりを実感する。
 皇帝陛下からの召喚を拒否するなんて真似……シャンパージュ伯爵家でなければどう考えてもまかり通らないだろう。本当に、かの伯爵家はとてつもない存在なのだと再確認した。

 敵に回したくは無いが、皆で考えた今後の計画だとシャンパージュ伯爵家に力を借りる事が必須。
 シャンパージュ伯爵家の協力無くては、ランディグランジュ家を守る事はおろか……俺を信じて着いて来てくれた侍従達やその家族、はたまた親戚筋の家門を守る事も出来ない。
 とうに、悪人となる覚悟は出来ている。父から俺が奪った全てを守る為ならば、プライドも何もかもかなぐり捨ててやる。

 俺は、アランバルト・ドロシー・ランディグランジュ──……何もかもを間違えた最低最悪の愚者だ。愚者は愚者らしく、最期の時まで足掻いてみせようとも。

『まぁ良い。此度は……ランディグランジュの爵位簒奪、が議題だったな』
『その通りにございます。詳細の説明が必要であれば致しますが、如何なさいますか?』
『手短に話せ。私も暇では無い』
『は、仰せのままに』

 そして。皇帝陛下の側近の方、ケイリオル卿からこの事件にまつわる話が手短にされた。
 それを他侯爵家の当主達はつまらなさそうに拝聴し、公爵と大公は逆に興味深そうに拝聴していた。