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 大人の男に囲まれ襲われかけたがそれを返り討ちにした事を、アミィはとても誇らしそうに語った。
 果実水や氷菓子がとても美味しかったから後でシルフにも買ってあげるね、と楽しそうに笑っていた。
 更には新たな友達も出来たと嬉しそうに話していた。
 …………すっっっごく面白くない。ボクがいないうちにどうしてそんな危険な目に遭ってるのかなぁ……。
 的確な判断で敵を制圧したと言えば聞こえは良いけれど、ボクとしては可能な限り危険な事はして欲しくなかったのに。
 というか新たな友達って何、怪しくない? 一人ぼっちの女の子に心配だから声かけるってちょっと怪しすぎると思う。しかも大人の男だったんだよね? 絶対裏があるって。
 人間は裏表の激しい種族なんだから、そう簡単に他人を信用しちゃいけないってハイラからも散々言われてる筈なのに……全然あの子は分かってない。
 普通は初対面の男と仲良くなったりしないの! 危ないでしょもうっ! って言っても絶対アミィは『大丈夫大丈夫、あの人いい人だから!』とか言って軽く受け流す事だろう。
 本当になぁんでボクがいない時にさ…………そもそもボクが一時的にアミィの傍を離れた事だってボクとしては予定に無い事だったし……。


 ──アミィが果実水とやらをボクにも分けてくれると言った、その時だった。

「いいの? じゃあ貰──っ!?」

 アミィが差し出してきた果実水に舌を伸ばした時。このボクの自室の扉を勝手に開いた者が現れた。

「──なぁなぁちょっと仕事の話があるんやけどぉ」

 空色の髪を肩で切りそろえた露出の激しい男が、気の抜ける口調と共にズカズカと押し入って来た。

「おまっ、ちょっと何勝手にッ」

 それを追い出そうと急いで立ち上がり、その勢いで音声を切断した。
 ……ボクは個人的な空間を侵されるのが嫌いだ。それはこの男とて知る筈なのに。いつもと同じへらへらした笑みで現れた。
 可能な限り部屋に入って来て欲しくなくて、急いで扉近くの壁際に追い込む。

「部屋に入るぐらいええやん別に〜そんな神経質ならんときぃやぁ」
「死にたいのか、お前は」
「そういう訳やないよ。ただほんまに仕事の話しに来ただけやのになんかえらい怒ってはるし……」
「お前がこの状況で勝手に部屋に入って来たからだよ、ハノルメ」

 ボクが一睨みすると、ハノルメは「ごめんなさぁい」と心にも無い謝罪を口にした。
 ハノルメは……風の精霊だ。とにかく面倒で気持ち悪い男。可愛いもの程虐めたくなる特殊性癖の男で、絶対にアミィには会わせないと決めている精霊のうちの一人だ。
 ハノルメは左手に持っていた紙の束を手渡して来た。ボクはそれを受け取り、次に視線を落とす。そこには……制約の破棄に関係する様々な文言が記されていた。
 制約の破棄には全属性の最上位精霊の同意が不可欠。だからこそ以前の上座会議でエンヴィーと共に散々演説したんだが……。