「わたくしも、来月はノムリス卿との地方の教会への視察がありますわ」
「ふむ、既に五人の予定が確認されてしまったか……実を言うと私も常々予定はあるので、神殿都市を離れる事は出来ない」
「これで六人の予定が分かったな」
「まあ、どうしましょう」

 うーん。と三人は仲良く苦慮する。顎に手を当てて考えたりもするが、残りの六人の予定はどうやら彼等でも分からないらしい。

「残り……は、ラフィリア卿とマリリーチカ卿とエフーイリル卿とライラジュタ卿とオクテリバー卿とディセイル卿よね。ラフィリア卿は常に多忙だから無理だとして……」

 メイジスが残りの大司教達の名を挙げては、即座にラフィリアは無理だと判断する。それには、ジャヌアとアウグストも「まぁそうだ」「ラフィリア卿は最も多忙な方だからな」と納得していた。

「若い子を向かわせた方がいいのかしら?」

 真剣な顔でメイジスがボソリと呟くと、

「ならばディセイル卿とライラジュタ卿になるが、あの二人が大人しく神殿都市を離れるか……」
「「あぁ……」」

 ジャヌアが大司教の中でも若い二人を指名した。
 だがしかし……そこですぐさま問題が浮上する。彼等二人はどちらも異常な程にミカリアを尊敬している為、あまり神殿都市から離れようとしないのだ。
 いざ任務で離れろと言われても、まず第一声目には『嫌だ! 僕は聖人様がおられるこの都市を離れたくない!!!!』『私が何故神殿都市を離れなければならないのか、私が納得出来る理由を述べて下さい』と、ぎゃあぎゃあ騒ぐのだから。
 それを知るアウグストとメイジスは一瞬にして全てを悟り、諦念のため息をもらした。

「……困ったな。招待状を貰ったのに、このままでは皇太子の誕生パーティーに向かわせる者が決まりそうにない」

 ディセイルとライラジュタを向かわせる事は諦めたのか、ジャヌアが仕切り直そうとした、その時だった。
 ジャヌアの背後に突如として人影が現れる。