「ハッハッハッ! その時はその時だ。お前はテンディジェルの者として堂々とずる賢く立ち回れば良い」

 レオナードはこれに、(相変わらず適当だなぁ……)と愛想笑いを返した。
 彼に拒否権など最初から無く、こうしてめでたくフリードルの誕生パーティーに出席する事が決まったのだが……当然、レオナードも乗り気では無い。
 何せ一人で一度も行った事の無い帝都に行き、王城にて開催される皇太子の誕生パーティーに出席しなくてはならないのだ。寧ろ、誰が乗り気になれるんだ。

 これまで社交よりも内政に注力した人生を送っていた為、レオナードは己の社交能力に全く自信が無い。事実上の社交界デビューが皇太子の誕生パーティーだなんて……とレオナードは密かに絶望していた。
 それを察したログバードが、気を解してやろうと話題を変える。

「それにな、帝都のパーティーと言えば帝国中の貴族が集まる場だ。お前のお眼鏡にかなう女の一人や二人いる事だろうよ。皇太子を祝う為じゃあなくて、嫁探しの為にパーティーに出席するんだと思えばいい」
「皇太子の誕生パーティーに嫁探しで出席する方がよっぽど不味いと思うけど」

 だがそれは失敗に終わった。レオナードはあまり触れられたく無い話題に触れられ、冷たくピシャリと言い放つ。
 しかし、ログバードはそんなの気にもとめず、呆れ顔で続けた。

「お前ももうすぐ十七になるんだ、そろそろ良さげな女とっ捕まえて身を固めておいた方がいいぞ? どれだけワシが紹介してやると言っても運命だ理想だと騒いで聞かんのだから、いい加減自分で探すぐらいしろ」
「うっ……別にいいでしょ、少しぐらい夢見たって……」

 ズバリ図星だった。レオナードは現在十六歳にしていずれ大公領を治める事になるであろう男。そして、領地では知らない者がいない程の美男子だった。
 故にそれはもうモテる。毎年誕生日には領地の女性達から貢ぎ物(プレゼント)が届き、街を歩けばすぐに女性に掴まり囲まれる。ある種のアイドル的存在なのだ。

 当然、幼い頃から彼に婚約者を……と言う話は上がっていたのだが、レオナードは当時から絶世の美少年と名高く、我こそはと名乗りあげる女性があまりにも大勢いて全く決まる気配が無かった。
 そして、レオナードの可愛い妹であるローズニカが『だれにもおにーしゃまはあげないもん!』『おにーしゃまはローズのおにーしゃまだもん!』と頑固だった事から、レオナードは婚約者も定めぬままこれまで生きて来たのだ。