「ふふっ、私の手作り料理を食べるのは貴方が初めてなんだから。とくと味わってくださいな」
「〜〜〜〜っ!?」

 その可愛さ、まさに天災級。多少ネジが外れている方が愛嬌もあっていい、と言うが……アミレスの場合は多少体調不良な方が加減が無くていい……とでも言うべきか。
 彼女が多少体調不良であると、アミレス・ヘル・フォーロイトという少女の持つ魅力がいかんなく発揮されてしまうようだ。
 それを至近距離で直撃したイリオーデは、アミレスの手作り料理という言葉とその笑顔で完璧なコンボを決められ、放心していた。

(──嗚呼、私はなんと、幸福なのか……)

 最早悟りの境地に至っている。彼は突如天を仰ぎ、その目尻から一筋の涙を零れさせた。
 その後も何かと世界に感謝しつつ、イリオーデは一口一口を噛み締めるようにお手軽焼きリンゴサンド〜シナミーを添えて〜を歓喜に打ち震えながら食べていった。
 味と原型が無くなるまで咀嚼し、もう咀嚼するものがなくなれば次に行く。そんな、非常に時間のかかる食べ方だった。
 それを見たアミレスはお手軽焼きリンゴサンド〜シナミーを添えて〜をもぐもぐしながら、

(イリオーデって食べ方綺麗だなぁ)

 割とどうでもいい事を考えていた。そうやって二人で和やかな食事を楽しみ、食後のティータイムと洒落こんでいた時だった。
 ドタドタドタと凄まじい速度で誰かの足音が近づいて来る。やがてそれは厨房の前で止まり、壊れんばかりの勢いで厨房の扉は開け放たれた。

「ここじゃっ! ここからアミレスの匂いが──す、る…………」
「おねぇちゃん!! ……って、あれ」
「アミレス様! ご無事、です……か?」

 現れたのはナトラとシュヴァルツとメイシアだった。三人共血相を変えて厨房に飛び込んできたのだが、中でのんびりとティータイムと洒落込むアミレスを見て唖然となる。
 アミレスが「びっくりしたぁ……皆、急にどうしたの?」と目を丸くして呟くと、

「びっくりした、はこっちの台詞じゃ! メイシアからお前がいなくなったと聞いて我がどれ程驚いた事か……っ」
「そーだそーだ! 本当に部屋におねぇちゃんいないし、ぼく達めちゃくちゃ怖かったんだからね!!」
「アミレス様の様子を見にお部屋に向かったら姿が無くて……本当に、凄く、心配したんだから…ぁ!!」

 今にも泣き出してしまいそうな顔でメイシアがアミレスに抱き着くと、それに続くようにナトラとシュヴァルツもアミレスに抱きつこうとした。
 が、しかし。それはイリオーデによって阻まれる。襟元を掴まれて動きを抑えられたナトラとシュヴァルツは、恨めしそうにイリオーデを見上げ、

「さっさと離すのじゃ、人間」
「つーか何でお前はここにいるんだよ、お前がおねぇちゃんを連れ出したわけ?」

 睨みつける。だがイリオーデはそれに一切動じず、言い放つ。