「待ちたまえ。ここはやはり、当事者たるレディにこそ決定権があると思うのだが、諸君はどう思う」

 アルブロイト公爵の発言に侯爵達はハッとなり、「それもそうだ」「確かに、マリエルちゃんが決めるべきだね」「マリエル嬢が決めるべき……確かにそうだ。我々が口を挟む事ではない」とあっさりと賛同した。
 そしてまたもや私に集中する視線。本当に私が決めていいものかとケイリオル卿の方に目を遣ると、彼は問題無いとばかりに親指をぐっとあげた。
 どうやら本当に、私が屑達に与える処罰を決めなければならないらしい。何と責任重大な。

「そうですね…… とりあえず全員死んで欲しいですね、法が赦す限り最も残酷な方法で」

 屑達に向けてニコリと微笑みかけますと、彼等は等しく身を震え上がらせた。ふふ、何と無様な表情なのでしょうか。
 今まで自分達がして来た事を思い返しなさい。情状酌量の余地など全く無いでしょう?

「残酷な方法ですか……それなら打首は無しですね。あんなの一瞬ですし」
「ならばやはり真鍮の雄牛(ファラリス)でいいのでは?」
「ランディグランジュは随分とそれを推すな……」
「概要を聞いただけでも結構惨いし、それでいいんじゃないか?」

 話はまた戻り、結局屑達はその真鍮の雄牛(ファラリス)なる処刑道具の実験台になる事で話は纏まりました。
 その後、本来なら家門をとり潰すところではあるものの、あの屑はともかくララルス侯爵家は帝国の功臣。その事があって家門のとり潰しは免れました。

 その代わり、代々ララルス侯爵が務めてきた財政管理に関する任は解任。もう二度と、その座にララルス侯爵が座る事は無いでしょう。
 他にもララルス侯爵家に与えられていた様々な権限が剥奪され、財産のほとんども没収されました。これにより、ララルス侯爵家は事実上の没落。名誉と信頼は失墜し、残されたのは歴史のみ……なんと存在価値の無い家門なのか。

 そして上手く会話を誘導し、私がその爵位を受け継ぐ事となりました。何せ妹はまだ十五歳とかで、没落したとは言えど、歴史ある家門を運営する力など無い。
 よって、モロコフ・シュー・ララルスの血を持ち家門の運営も可能な私が……と、いい感じに会話を誘導したのです。

 ええ。全くの予定通りです。本来後継の立場に無い私が当主も邪魔な人間も全てを法的に殺害し、当主の座につく──これは、そんな爵位簒奪計画だったのだ。
 会合は終わり、屑達は例の処刑まで投獄。私の叙爵式は三日後に執り行う事に。予想よりも早くて驚いていると、ケイリオル卿が随分と明るい声で、「こんな事もあろうかと前々から準備しておりましたので」と耳打ちして来た。

 そして私達は各々現地解散……と皇太子殿下に言われたのですが、シャンパージュ伯爵と共に帰ろうかという時、オリベラウズ侯爵達に呼び止められました。