「ではアルブロイト公爵の疑念も晴れた事ですし、早速、マリエル・シュー・ララルス令嬢から話を聞いてみましょうか」

 パンッ、と手を叩いてケイリオル卿が話を戻す。それに従い、私は神妙な面持ちを作る人達に向けて事のあらましを語りました。
 八年前失踪した理由、こうして告発するに至った理由、屑──ララルス侯爵とその家族が犯してきた罪の内訳、それらをすらすらと言い淀む事無く話してゆく。
 一通り話し終えて、ふぅ……と一息ついた所でフューラゼ侯爵が挙手をして、

「ちなみに聞きたいのだが、マリエルちゃんは八年間どこにいたんだ? それと、どうやって過去のものだけに留まらず八年分の不正の証拠を集めたんだ?」

 不明瞭であった点について言及して来た。これには皆様同意見のようで、興味深そうにこちらに視線を集中させている。
 どこにいたかについてはもう隠す必要も無くなったので、大人しく話しましょうか。証拠を集めた方法は……一応カラスは極秘部隊ですし、話せませんね。

「証拠を集めた方法は独自の方法で、としか。その代わりに八年間どこにいたかはお話出来ます」
「……ではどこに?」
「此処です」
「「え?」」

 フューラゼ侯爵とオリベラウズ侯爵の素っ頓狂な声が重なる。

「王城──……正確にはその敷地内にある皇宮にて、侍女をしておりました」

 淡々と語りますと、各部署の部署長の方々があんぐりとして私を見ていた。しかしそれは彼等だけでなく、侯爵達も同様であった。ランディグランジュ侯爵とテンディジェル大公が驚きから目を丸くし、開いた口が塞がらない様子。
 アルブロイト公爵はどこか納得したかのように薄ら笑いを浮かべている。
 そして、

「「こ、皇宮で侍女ぉおおおおおっ!?」」

 フューラゼ侯爵とオリベラウズ侯爵が大変息の合った叫びを上げる。やはり昔からとても仲がよろしいですわね、この御二方は。

「い、いやしかし。侯爵令嬢で当時十六歳とかだった令嬢が突然皇宮で侍女になると言うのは流石に無理のある話では?」

 あわあわとしながらランディグランジュ侯爵がそう尋ねてくる。皇宮の侍女はかなりの名誉ある職。それに失踪した侯爵令嬢がすぐさまなるというのは、確かに現実的では無い。

「私の母が元侍女だった事と、ララルス侯爵によく侍女の真似事を強要されていた事から私も侍女の仕事には覚えがありました。皇宮で働けるようになったのは……偶然、としか言いようがありませんね」
「そのような事情が……実の娘にそのような事をさせるとは、ララルス侯爵は酷い男だな」

 ランディグランジュ侯爵は何故こうも妙に親切というか、親身になるのでしょうか。気味が悪いですね。
 キッとランディグランジュ侯爵が睨みをきかせると、屑はビクリと肩を跳ねさせて萎縮した。自分より一回りは歳下のランディグランジュ侯爵に少し威嚇されただけでああも怯えるなんて情けない……。