そこには錚々たる顔ぶれがいました。皇帝代理たるフリードル皇太子殿下を始めとした……皇家に連なる血筋のアルブロイト公爵、帝国に従属する公国統治者のテンディジェル大公、四大侯爵家のフューラゼ侯爵、オリベラウズ侯爵、ランディグランジュ侯爵、各部統括責任者たるケイリオル卿や各部署の部署長らしき方々が何名かいました。

 これ程のお歴々が一同に会するとは…場違い感が凄まじいですが、これからは私もこの場にララルス侯爵として訪れる事になるやもしれませんから、今のうちに慣れておかねば。

「シャンパージュ伯爵はあちらに。貴女はこちらの席へどうぞ」

 ケイリオル卿によって案内された席に座りますと、向かいにオリベラウズ侯爵が座ってらっしゃって。どこかそわそわとしていたオリベラウズ侯爵は、少しして挙手をした。

 それに皇太子殿下が「何だ」と反応すると、オリベラウズ侯爵がキリリとした顔で「少しの無礼をお許しいただけますか」と申し出た。
 一体彼は何を……と困惑していると、皇太子殿下から「……許可する。しかし罪人が到着するまでだ」とまさかの許可が下り、オリベラウズ侯爵は意気揚々と立ち上がって、

「マリエルちゃ〜〜ん! おじさんの事は覚えているかい? 顔は見えないけどきっと凄く綺麗に成長したんだろうなぁ〜〜っ! 急に行方不明になったと聞いて結構本気で心配していたんだよ、僕!!」

 随分と陽気に話し掛けて来た。やけににこやかなオリベラウズ侯爵に、私は圧倒される。
 何だかとても懐かしいですね、この感じ。昔よく屑の用事に付き合わされて、他の侯爵達ともお会いした事がありますが……オリベラウズ侯爵はその中でも特に私に良くして下さった覚えがあります。

 しかしまだ皇太子殿下の前でベールを取る事も喋る事も出来ませんので……私は頷く事で彼の言葉に答えました。勿論覚えていますよ、と。

「そっ……そうか……彼女がマリエル嬢なのか…………」

 斜向かいに座っているランディグランジュ侯爵がじっと私の方を見てくる。改めて見てもイリオーデ卿とはあまり似てませんね。

「オリベラウズ、いくらマリエルちゃんが可愛いからって突然絡むのは良くない」
「だがフューラゼ、マリエルちゃんだぞ? どうしてあの馬鹿の元であんなにも可愛くてちゃんとした子が育ったのかと何度も酒を飲み議論した、あのマリエルちゃんだぞ?」
「それはそうだが……互いに会うのは八年ぶりなのだ。もっと慎重に、そしてゆくゆくはうちの倅と結婚して俺の娘に……」
「はぁ〜? マリエルちゃんは僕の娘になるんですぅ〜! 誰がお前みたいな偏屈の所に嫁がせるか!!」

 何話してるんでしょう、この人達。というかまだその話してたんですか。幼い頃から度々あの馬鹿馬鹿しい論争は聞いてましたが……まさかまだ続いているとは。