姫様は元よりとても勉強熱心な方でしたが、しかしどうしても私などには頼って下さらなかったのですが……シルフ様と仲良くなり変わられてからというもの、私にも積極的に頼って下さるようになりましたね。

 ……剣に魔法に体術に勉学に礼儀作法と、その内容は少し王女殿下には相応しくないものでしたけれど、カラスの隊長より趣味で武芸百般を教わっていた私にはそれを言う資格は無いでしょう。
 姫様はとても頭脳明晰で、発想力にも優れ頭がとても柔らかくあそばされる。そしてなんと言っても記憶力が非常に良い。

 特に必要は無いのですが、試しで歴代皇族の御名前全てと功績と没年を全て覚えていただいた所…………なんとものの五日程度でそれを成し遂げられた。こんなもの、普通の人ならば一ヶ月で成し遂げても賞賛を浴びる事だろうに。
 この時点で私は既に確信しておりました。姫様の記憶力は我々の想像を遥かに超えるものなのだと。それを更に確かめるべく、では次に、と私は帝国法全条全項を覚えていただく事にした。流石の姫様も、この話を聞いた時は物凄く唖然としていらっしゃった。

 しかしそれでも姫様は素晴らしく努力家な御方です。皇帝陛下と皇太子殿下ともあろう御方がまさか暗記していない訳無い。何せ御二方とも帝国を担う御方です、覚えていて当然では? と私が口にすると、姫様は俄然やる気になられたのか……異様な速度で一つずつ暗記していかれた。

 そしておよそ一ヶ月強が経った頃には、姫様は見事、帝国法全条全項を暗記すると言う快挙を成し遂げた。その間にも通常の授業やシルフ様エンヴィー様との特訓もあったのに、姫様は本当にあっという間に成し遂げられたのです。
 天才。まさにその一言に限ります。シルフ様やエンヴィー様からも度々姫様が才能の塊であると言う風に伺ってはいたのですが……姫様が学びたいと仰った全分野──……特に戦闘系において発揮なされたその才覚は、天より与えられたとしか思えない程。

 ある日突然他国の王子殿下を特訓場まで連れて来た時には、シルフ様と共にかなり驚いた記憶があります。姫様が共に高めあえる御友人を見つけられたのはとても良い事と思いました。しかし、しかしですよ。何故男性なのですか。

 初対面の頃は少しよそよそしかったエンヴィー様でさえも、数年間間近で姫様の魅力を味わった事により、姫様にとても甘くなられたのですよ。
 年頃の若い男など目と目が合うだけで姫様に心を奪われるに決まってます! と私が暫くマクベスタ様を目の敵にしていた事には気づいてましたか? 今やそれ所ではございませんが。