「星を冠するのはボク達全員、だけどね。アミィにはどうしても話せないけども」
「流石に……精霊の事情の中でも一二を争うトップシークレットっすからねぇ、アレは。特に精霊にすげー興味と好意を持ってくれてる姫さんに対しては」

 やれやれと肩を竦め、ボク達は精霊の事情について話していた。制約とか関係なく、ただ純粋に、夢見る人間達には真実を知らせない方が良いだろうとボク達の方で判断した事柄。
 ボク達が、アミィに精霊の事をほとんど教えずにいる理由の一つ。

「アミィは特に……それ以外の人間達でも驚くだろうな。まさか自分達が今まで見て来た星空が──……死んだ精霊達そのものだって知ったら」

 そう。人間界と精霊界にある星空は微妙にだが繋がっており、その夜空で星々として光瞬くのは全て死んだ精霊達の魂なのだ。
 一部を除き精霊はいずれ力尽きて普通に死ぬ。死んだ精霊は肉体を失い、その魂は星と成り最期の輝きを放つのだ。

 精霊界の至る所が星空のように輝くのは、それだけの精霊の死が積み重なって来た証。人間界の星空が常に美しいのは、それだけの精霊の魂が最期の輝きを放っているからである。
 別にボク達は最初からこういうものだし、これについては全く忌避していない。寧ろ、空を見上げればそこに親しかったヒトの魂がある為、いつでもどこでも墓参りが可能なのである。とっても便利で楽だと思わないかい?

 だがまぁ、こう考えられるのはボク達が精霊とはそういうものと認識しているからであって……人間がこれを知ればそう上手くはいかないだろう。
 アミィ風に言えば…………そう、軽く気が狂いそう。って事になるかもね!

「エンヴィーもその内死ぬんだから、後継は早めに決めておいた方がいいんじゃないか?」
「いやぁまだ向こう二千年は生きますよ、先代だけは超えねーと。だから後継もまだいらないっすわ」

 にこやかに、和気藹々と話しながらボク達は仕事をする。やっぱりこうして軽く会話していた方が気が紛れていいのだ。
 ちなみにこれは精霊界ではテッパンの冗談である。最上位精霊達は暇な時にこういう冗談を言い合うのだとか。基本的に最上位精霊同士は仲が良いのだ。

「お前の先代は大体千年とかで死んだ気がするけど」
「先代は三千二十五年っすよ。俺は今で千二百七年なんで、後二千年あれば……まあ超えられますね」
「え、あいつそんなに生きてたの? もっと短いと思ってた」

 エンヴィーの先代……前の火の最上位精霊はどうやらボクが思っていた以上に長生きだったらしい。
 そもそも最上位精霊はその役職に相応しい強い精霊(大体は上位精霊)に与えられる役職なので、大体の最上位精霊は長生きなのだが……それでも平均二千年とかそこらで大半の最上位精霊は死んで代替わりが行われる。

 上位精霊も大体同じぐらい。中位精霊はそれよりもう少し短く、下位精霊はそれよりももっと短い。まあそれでも七百年前後は生きるようだけど。
 中にはかなり特殊な魔力を司る為、そもそも代替わりが出来ず数万年と死ねずにいる最上位精霊も数名いる。
 時と終の最上位精霊達がそうだったかな。ボクもあいつ等とはもう長い付き合いだ。どちらも立場としてはボクの側近……みたいな立場にある。多忙だから仕事の指示を受ける時以外滅多にボクの所には来ないけどね。