そして分かった。あの加護は、ボクが思っていたよりもずっと面倒なもので……加護属性《ギフト》の件もそうだが、アミィを不幸にしかねないものだと。

「もし、アミィが加護属性《ギフト》を持ってると周りの人間に知られたらどうなると思う」
「そりゃあ………姫さんの家族の事ですから、徹底的に姫さんを利用してその力と人生を搾取するんじゃないですかね。姫さんが死ぬ事は無くなるかもしれませんけど、姫さんの願う幸せからは完全に遠ざかるでしょう」

 チッ、と舌打ちをして苛立たしさを何とか紛らわそうとするエンヴィー。彼の見解は概ねボクのそれと同じだ。
 あの子を殺そうとする非情な家族が、莫大な価値を有するアミィを放っておく訳がない。利用されて擦り切れるまで使われて棄てられるのがオチだ。

「そうだね、それはボクも分かってた。だから一応……加護属性《ギフト》がそう簡単には発現しないようにこっそり封印したんだ」
「封印……つっても、まだ発現してすらいないモンをどうやって封印したんですか?」

 エンヴィーは素直に疑問を口にした。ボクはそれに、紅茶を少し含んでから答える。

「ある一定の条件を満たさないと解けない封印をあの子に施した」
「条件って?」

 相当気になるのか、エンヴィーは前のめりで固唾を呑む。その頬には緊張しているのか冷や汗が一粒見受けられた。
 最初からこの"条件"はエンヴィーには教えるつもりだった。うっかりボクの自己満足からあの子に与えてしまった過分な力……これに対するせめてもの償いとしてボクが用意した、最後の砦。