「前に話しただろ、アミィに昔加護あげたって」
「それは聞きましたけど……程度の低い加護だと思うでしょ普通!? 加護属性《ギフト》が付随する程の加護あげるとは思わんでしょ普通!?!?」
「は? ボクがアミィに生半可な加護あげる訳無いだろ。やるからにはとびっきりの加護あげたに決まってる」

 ただの精霊の加護なんて信用ならないからね。やるからにはボクに出来る最上級の加護をかけるに決まってるだろ。多分六年ぐらい前にもそんな事を考えてボクだけに使える加護をかけたんだよね……まぁ、あの時は加護属性《ギフト》が発現するかもなんて事すっかり忘れてて、加護をかけてから思い出したような気がするのだけど。

 エンヴィーが皺だらけの顔で額に手を当て項垂れる。その口からは「本っっっっっ当にアンタってヒトは……っ!」とボクに対する文句が漏れ出ているようだった。

「特に深く考えずに、ボクがかけられる最上級の加護をアミィにあげたはいいけど……よくよく考えたらアレって加護属性《ギフト》がおまけで発現しちゃうなーと加護をかけた後に気づいたんだよね」
「いやマジで何してんすか……ああもう、緑の竜の権能が効かない時点で気づくべきだった。竜種の権能を無効化するレベルの加護とかそりゃもうとことん限られるっつの……」

 エンヴィーは重苦しくため息を吐き出した。ちらりと訝しげにこちらを見て、

「この事、姫さんは知ってるんスか?」

 加護や加護属性《ギフト》についてアミィに話したのかと聞いて来た。ボクはそれに堂々と答えた。

「愚問だね、全く話してないに決まってるだろ」
「そんな誇らしげに言う事じゃないんすよ」

 エンヴィーの冷静な言葉がボクのプライドを傷つけた。

「アンタが俺達精霊や自分の事を姫さんに不必要に話したがらないのは、まあ、分からなくもないですけど……だからってこれは話しておかないと不味い事でしょうが。人間達にとっての加護属性《ギフト》は、俺達が思う以上に大きな存在なんすから」

 エンヴィーはボクに向けて大真面目に説教を始める。分かってるよ、それぐらい……そんな子供みたいな言い訳がポロリと口をついて出た。ボクだって話せるものなら話していた。だけど、怖かったんだ。

 勝手にそんな大層なものを与えて、あの子も知らず知らずのうちにどんどん人間から離れていって──……それを知ったあの子が、ボクを恨んだり憎んだりするのが、とても怖いんだ。
 こんなの自分勝手だって分かってる。とんでもない酷い考えだって分かってる。分かってるけど…………それでもボクは、あの日あの子に加護を与えた事を後悔はしていない。

 どんな効果があるか詳しくは知らないままかけたあの加護のおかげで、図らずともアミィは何度も死を回避出来た。そう考えると、寧ろアミィに加護を与えていて良かったと思えた。
 緑の竜の権能や、毒やら病やら呪いやらがアミィに効かない理由がボクの加護なんじゃないかって気づいてからは、色々とボクの方でもあの加護について調べてみた。