「もう嫌なんですよ。返っても来ない愛情を求め続けるのなんて。だってそんな無意味な事をし続けた挙句、結局最後にはあんた達に殺されるんだから」

 ゲームでアミレスが幾度となく殺されたのを私は見た。その中でもきっと彼女にとってとても辛かったであろう、家族による殺害も何度か目にした。
 あんた達に愛を求めていると私は死ぬの。他ならぬあんた達やこの世界に殺されてね。私はそんな惨めで虚しい終わりは嫌だ。そもそも死にたくない。だからフリードルにも皇帝にも愛を求めないと決めたのよ。

「何をそんなに驚いてるんですか? 兄様とお父様がいずれ私《わたくし》を殺すつもりだという事ぐらい把握してるに決まってるでしょう。誰が、自分をいずれ殺す事になる相手を愛せると言うのでしょうか?」

 何故か驚いた顔をするフリードルに向け、私は淡々と語りかける。そりゃあ世の中にはそういう本当の愛を知る人もいるのだろう。だが生憎と私はそんなものを知らない。
 アミレスだって殺されるとは知らなかった。だから純粋に愛を求め続けられたのだろう。そしてその愛の果てに、貴方の手で死ねるのなら本望です、なんて言ってしまうんだ。

「兄様が私《わたくし》の事を愛してくれた事が一度たりともありましたか? 無かったでしょう、そんな事。愛されないと分かっていて愛を求めるような愚かな事……私《わたくし》はもう、二度としたくないのです」

 いつかのアミレス・ヘル・フォーロイトのような結末は絶対に辿らない、そう決めたから。

「──そもそもの話だ。何故、僕がお前を愛する必要がある?」

 フリードルの作り物のような冷ややかな目が、私を貫いた。やはりこの男は一度たりともアミレスを愛した事が無かったのだと聞いて、心がズキズキと痛む。何だか視界が揺らぎ始めた。目頭が熱い。あれ、これ……まさか。

「……私、泣いてる……? なん、で……こんな時に……」

 ポロポロと、涙が瞳から溢れていた。これはきっとアミレスの涙だ。フリードル本人から愛した事が無いと言われた事に、アミレスの残滓が泣いているんだ。

「……いやだ、泣きたくなんかない。あんな男の所為で、泣く、なんて…………っ」

 何度目を擦っても涙が止まらない。それどころかアミレスの悲しみが少しずつ私の心を侵食しているような気がする。フリードルの所為で泣くなんて嫌なのに、それなのに涙は止まらないし、フリードルは完全に厄介なものを見る目でこちらを見ている。
 どうしたらいいか分からない、そんな時だった。聞き慣れた二つの声が私の耳に届く。