あの時カイルが使用した絶対捕縛魔法とやらの中には本当に魔法封じの効果もあったらしく、それにより隷従の首輪の魔導具としての機能が著しく低下してほぼ機能停止状態にあったとか。
 よってアルベルトも私に色々と話す事が出来たらしい。本人も、皇宮に行って詳しく話している時に、そう言えば何でこんなに話せるんだ? 隷従の首輪の効力は? と疑問に思ったようで……そこで判明した事実である。
 その為、アルベルトに判決を下す為に必要な証言がシルヴァスタ男爵とアルベルトの自供だけとなり、一度犯行現場に居合わせ彼から色々と話を聞いた私もまた、重要参考人として証言する事になったのだ。

「──では、続いての証人喚問に移る。証人は前へ」

 法廷の入口、その扉の前でハイラと司法部の方と共に待っていると、中からそんな言葉が聞こえて来た。どうやらシルヴァスタ男爵への判決は私の移動中に下されたようだ。
 司法部の方の方にちらりと視線を送ると、彼はこくりと頷いてハイラと共に扉をゆっくりと開いた。
 そして私は堂々とした態度で法廷に足を踏み入れる。私の登場を知らなかった人達が泡を食ったような顔で私を見ていた。二階の傍聴席を見ると、そこではフリードルも目を見開きかなり驚いているようだった。

「アミレス・ヘル・フォーロイトは帝国法に則り嘘偽りの無い証言を致します事、ここに宣言します」

 王女が証人としてこの場に現れた事にザワつく法廷。しかし、

「静粛に! では証人、証言の方を」

 裁判長の言葉で水を打ったように静まり返った。私は意を決して証言を始めた。

「先日、七人目の被害者が出た後の事です。私《わたくし》は一向に捕まる気配の無い殺人鬼をどうにかして捕まえ、一日でも早くこの悲劇の連鎖を断絶しようと夜中に張り込み捜査を決行しました。そして幸か不幸か捜査開始一日目にして犯行現場に遭遇、実行犯アルベルトと交戦致しました」

 半信半疑とばかりにこちらを見てヒソヒソと話す他の証人達。それもそうだ、世間知らずの野蛮王女がアルベルト程の激強犯人と交戦したとか、張り込み捜査をしたとか、普通なら信じ難いような話だからね。
 まぁ、生憎と全て真実なのだけど。