「ありがとう、ハイラ。少し自分に自信が持てた気がするわ」
「……私なぞの言葉で良ければ、いつでもどこでも姫様が望む限りお伝えし続けましょう。私の言葉も、力も、未来も、何もかも姫様のものですから」

 まるで野に咲く一輪の花のような孤高の美しさを放つハイラの笑顔が、愛しき人に差し出された花のように私だけに贈られた。とても、とても美人な私の侍女。優しくて頼れるお姉ちゃんみたいな人。
 ねぇ、アミレス。貴女の傍にはこんなにも貴女を思ってくれている頼れる味方がいたのよ。貴女がずっと振り向いてもくれない人達を見つめ続けていた間も、こうしてずっと見守ってくれていた優しい人がいたのよ。
 こんなにも貴女を思ってくれている彼女の忠誠には、私が代わりに報いるから……だから貴女もいつか、一緒に彼女に伝えましょう。ありがとう、って。

「お、王女殿下……そろそろ移動の方を……」
「もうそんな時間なの。分かったわ、行きましょう」

 コンコン、と個室の扉が叩かれたかと思えば司法部の方が私を呼びに来た。ハイラと話していたから裁判が急速に進んでいるのに気づかなかったわ。
 部屋を出る前に横目で裁判の様子を確認すると、いつの間にかアルベルトの証言が始まっていて。
 裁判の前にケイリオルさんから聞いた簡単な流れだと、アルベルトの証言の後に一旦シルヴァスタ男爵への判決(まぁ多分死刑)が下され、その後にアルベルトへの処罰を下す為の証人喚問が行われる事になるらしい。

 しかしあの場に集められたシルヴァスタ男爵の関係者達は、アルベルトが隷従の首輪を嵌められていた事実すら知らなかったのだと言う。シルヴァスタ男爵曰く、隷従の首輪とシルヴァスタ男爵の事は絶対口外禁止という命令をアルベルトに下していたらしい。
 じゃあ何であの夜アルベルトが私にそれらの話を出来たのか。それはそう、カイルの力である。