「……姫さんの才能は、はっきり言って異常だ。基礎をやり込ませたからそれがより顕著になった……血筋の影響もあるんだろうが、姫さんは有り得ないぐらい戦闘に特化した才能を持ってる」

 剣と魔法……それは本来相反するものだった。しかしいつからか人間達はそれを同時に使用し、更なる強さとするようになった。
 しかし人間達はそれを上手く行う事が出来なかった。何故なら、こと戦場において……剣で戦いながら魔法を発動するなんて事をしている暇が無いからだ。
 当然だ。剣で戦う時点で相当な集中力や気力が必要だと言うのに、魔法は更に精密な魔力操作や魔力管理を必要とする。
 この二つを並行して行おうとすると、常時の数十倍の速度で体は疲弊するだろうよ。そりゃあ、いざ戦場に出てそんな身を削るような真似をする奴はいないさな。
 だから人間界には騎士や剣士、魔導師といったそれぞれ専門の役職がある。いずれかに特化した方が自分は勿論味方の生存確率も上がるしな。
 剣と魔法を同時に扱い戦う……そんな事を平然とやってのける奴がいたならば、英雄だのなんだのって崇めたてられる事だろう。

 人間の歴史から見るに、今までもいなかった訳では無い。稀に剣と魔法両方に優れた化け物みたいな人間がいて、そいつ等は決まって戦場の英雄となっていたらしい。
 近代だと……姫さんの父親がそれに近いな。姫さんの父親はどちらかと言えば魔法寄りっぽくて、剣も扱えるが魔法の方が楽だから魔法を使ってるって感じだろう……って、氷の精霊のフリザセアの奴が言ってた。
 アイツは昔、姫さんの先祖に氷の魔力を与えたっきり他の誰にもそれを与えていない。その事もありアイツは氷の魔力の管理が凄く楽だといつも零している。
 何せ姫さんの一族にしか氷の魔力は発現しないんだからそりゃあ楽だろうな。
 何でも今はたったの三人しかいないんだとよ、氷の魔力保持者。確かに管理が楽そうで羨ましい……火の魔力は本当に母数が多いんだよ……。
 話が逸れたが、そんな感じで姫さんの父親はクソだがその才能は確かなものだったみてぇだ。その才能がより強く姫さんに遺伝した、って感じかこれ。
 姫さんは剣の才能は勿論、魔法の才能もある。元々魔力が多かったのに、シルフさんが勢いで加護かけたとかで魔力量は人並外れている。
 シルフさんによる魔法指導の甲斐もあって魔力操作は俺達精霊も舌を巻く程にまで成長した。……剣を振りながら片手間に長文詠唱を行える程成長するとは思ってなかったんだがな。