「……最初からアルベルトは減刑される予定だったと?」
「当然。帝国法に則りきっちり処罰は与えるが、それも終身投獄とか終身奉仕とかの予定だったんだ。隷従の首輪の被害者を死刑には出来んよ」

 まさかの私無意味だったと言う。ここまで勇気を振り絞って頑張ったのに、特に意味の無い努力だったのだ。なんたる骨折り損のくたびれ儲け。
 本当に全くの杞憂でしかなかったのね、私の不安は。

「……はぁぁぁぁぁぁ…………」

 ガックリと項垂れてため息をつく。せっかくケイリオルさんに頼み込んでダルステンさんを連れて来てもらったのに。まさか意味がなくなるなんて。
 何だかこのまま終わるのは嫌だ。そんな気持ちが私の中に湧き上がる。どうせだからとダメ元で彼等にお願いしてみよう。

「ダルステン部署長、アルベルトへの処罰は終身奉仕にしていただけませんか? 死ぬまで帝国に身命を捧げる、それは罪人には過分な罰かと心得ますが……しかしただ投獄するだけでは、罰とは言えません。やはり命を懸けさせるぐらいの罰にしなければ」

 ゆっくりと顔を上げ、私はもう一度ダルステンさんの目を見て話す。私は姑息な人間だから、姑息な手段を取るわ。

「まぁ確かに一理あるが…………王女殿下には何か具体案があるのか?」
「はい。ただ、これに関してはケイリオル卿への嘆願となりますが……」
「おや、私ですか?」

 今度はきょとんと首を傾げるケイリオルさんの方を見上げ、

「アルベルトを──諜報部で引き取っていただきたいのです」

 今日一番の大勝負に打って出た。この発言にはさしものケイリオルさんやダルステンさんも驚きのあまり固まっている。城勤めの人達に関する人事の一切を担う彼ならば、諜報部にアルベルトを所属させる事だって出来るだろう。
 そしてきっと、諜報部に行けば……アルベルトはサラと──弟《エルハルト》と再会出来る。だから私はアルベルトを諜報部で引き取ってくれと、無茶な事を言っているんだ。