「そう。知らないのか……相変わらずアミィは、ボク達には何も教えてくれないんだね」
(──出会ったばかりのあの男には気軽に色々と話すのに。どうしてずっと一緒にいたボク達には何も教えてくれないんだよ、アミィ……)

 今にも消え入りそうな弱々しい声音でシルフは呟いた。そして、その美しい顔を悲痛に歪めて項垂れる。
 あんなにもずっと一緒にいたのに。それなのにずっと何かをシルフ達には内緒にし続けるアミレスに、それをどことなく悟るシルフは心を痛めていた。
 ズキズキとシルフの心が悲鳴を上げる。数万年生きていて初めての胸の苦しみに、シルフは懊悩し、困り果てていた。


♢♢


 ───連続殺人事件の犯人がついに捕まった。

 その報せは、瞬く間に帝都中に広まった。これに帝都の人達は沸き上がった。ようやく殺人鬼の影に怯えなくて済むと。安心して暮らしていけると。
 どこから情報が漏れたのかは知らないが、街では犯人確保にアミレス・ヘル・フォーロイトが大きく関わっていると噂されているらしい。そういうの本当にやめて欲しい。
 犯人を捕まえたのはカイルだし、黒幕をきちんと引きずり出したのはケイリオルさんだ。確かに私も関わってはいるが、まるで私だけの手柄のように語らないで欲しい。何だかいつもそれ系統の誤解を受けてるような気がするわ。
 そして犯人逮捕から一週間。私はこの一週間何度かアルベルトに会いに行こうとしたものの……彼は現在重要参考人として地下監獄に捕らわれている為、私では面会出来なかった。
 その為、昨夜シルフにアルベルトへの伝言を頼んだのだ。シルフはきちんとアルベルトへの伝言を果たし、戻って来た。だが何やら戻って来た時のシルフの様子が変であった。元気が無いように見えて…………それを見たナトラが、

「過労じゃろ」

 とズバッと言い放ったにも関わらず、シルフは何も反応せず眠りについた。いつもなら鋭いツッコミが入ったりするのに、今回はそれが無い。
 本当にシルフも疲れているのかもしれないと思い、私は暫くの間魔法の特訓はお休みにする事にした。シルフも本業の精霊さんとしての仕事が最近凄く多くて忙しいって言ってたもんね。
 結局これまでアルベルトに会う事は出来なかったものの、実は数日前に私自ら、ケイリオルさんと司法部部署長の方の所に直談判に行っていたのだ──……アルベルトの処罰について、死刑だけは免除してくれと。