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 長い期間をかけて様々な特訓と平行してエンヴィーさんから一本取ろうと努力していたが、それは本当に難しく険しい壁だった。
 ……結局それが叶ったのはほんの半年前。半年前に、ようやく私はエンヴィーさんの虚を衝く事に成功したのだ。……まぁ、魔法も有りで何とかって感じだったけども。
 突然実戦だと言われても戸惑うだけかと思っていたが、私は案外冷静だった。いかにしてこの五人の大人の男達を制圧するか、それだけを考えていた。
 きっと騒ぎになるだろう。だがその時の為の言い訳や対策ももう考えてある。……ならば、もう行こうじゃないか。エンヴィーさんの教えに則り──全員、二十秒以内に倒せばいいのだから。

「……御安心を、お時間は取らせません。きちんと百秒以内に終わらせますので」

 ニコリと微笑みを作り、私はこの場の制圧の為に動き出す。唖然とする男達を尻目に私はまず一人、確実に動きを封じる。

「一人目」
「いッ?!」

 先程足に切り傷を作った小太りの男の右肩の辺りにただ剣を振り下ろし、傷を増やしてあげた。何の芸も無いやり方で申し訳ない。

「二人目……っと」

 すかさずその隣にいた小柄な男にも剣を向ける。その男は「ひぃっ!!」と情けない声を上げて逃げ出そうとしたので、しっかりと右脚の膝裏を斬った。これでそう簡単には逃げられまい。
 次は反対側だ。地面を蹴り一気に反対側に立っていた変な顔のおっさんの目の前に移動する。そして剣の柄でおっさんの顎を下から突き上げる。
 間抜けに口を開けっぱなしにしていたおっさんは舌でも噛んだのか、後ろに倒れ込んだ後声にならない叫び声をあげて悶絶していた。

「三人目」

 あと残りは二人。まぁ余裕だな、と思っていた所、どうやら相手にもそこそこ武術の覚えがある人がいたらしく、意地悪男じゃない方……先程短剣(ナイフ)を向けて来た男が背後から殴りかかってきたようだった。

「ぐっ……な……ッ!?」

 私は振り返らず剣を後ろに突き出し、男の腹部を攻撃する。私の剣はとても綺麗だから、後ろの事も刀身に反射して見えるのよ……残念だったわね。
 男の腹から剣を抜いて、よろめく男の腹を蹴る。これでこの男の動きも封じれたでしょう。

「四人目……さて、後は貴方だけですね」

 そう言いながら意地悪男の方を振り返ると、男は顔を真っ青にしながら腰を抜かしていた。顎を震わせて、「たすけてくれ」と繰り返している。
 とりあえず逃げられたら困るので、男の足に剣を突き刺して文字通り動きを封じる。男がうるさい叫び声をあげようとしたので、「お静かに」と圧をかける。

「助けろだなんて随分偉そうですね。どうせ貴方達は今まで何人もの女の子に酷い事をして、その度にその子達の助けてとかやめてって言葉を無視して来たんでしょう?  ちょっと虫がよすぎると思いませんか?」

 男を見下しながら、私はいくつも尋ねる。……それにしても、私、誰かを斬ったのは初めてなんだけど……全然罪悪感とか恐怖が無い。何も感じない。
 他人を傷つける事に抵抗が無いのだけど、これって戦うにあたって凄くいい事なんじゃあないか? エンヴィーさんも言ってたよ。『一瞬の躊躇が死に繋がる』って。これっていい事じゃないか!
 私ってば剣の才能あるんじゃないか? ふふ、そうだったら嬉しいなぁ。
 そうやって内心で一人盛り上がっていると、男が顎をガタガタと言わせながら話す。

「ちがっ、違うんだ!! 俺達はアイツ等に命令されてやってただけで…………っ!」

 ──急遽、私は予定を変更して男を問い詰める事にした。