「はぁ…………」

 仕事をしながら深くため息をつく。私の気分を表すかの如くどんよりと空を覆う曇からは、パラパラと雪が降り注いでいる。

「どうしたんだよアミレス。今日だけで何回ため息ついてんの?」

 長椅子《ソファ》の背もたれに腕と顔を乗せ、カイルがこちらを見てくる。

「……私ってやっぱり弱いんだなぁって思って」
「そもそもお前強かったんだ」
「別に強くはないわよ。人よりは戦える……と思ってたけど、実際はそうでもなかったってだけの話」
「ふーん、何か心折られるような事あったん?」

 何処か軽い口調でカイルは私の話に相槌を打つ。だがその軽いノリのおかげで私も心境を吐露しやすい。
 動かしていた手を止め、ペンを机に置いて私は愚痴をこぼす。

「昨日さ、貴方が来るまで私アルベルトと戦ってたのよ」
「おう。それは知ってるぜ、見てたから」
「見てた……? まぁいいか。それでね、私……魔法と剣どっちも使う戦い方が得意だからさ、まず魔法を使ったの」
「おお、魔法剣士みたいな? めっちゃかっけーじゃんお前」
「それはどうも。いざ魔法を使うとね、アルベルトの影に取り込まれちゃったのよ、私の魔法は全部。それで仕方なく剣だけで応戦してたんだけど……」

 はぁ、とまた息を吐く。
 魔法を扱えないとなると、私が持つ他者へのアドバンテージはほとんど無くなってしまう。故に相手と同等かそれ以下の状況で戦う事を余儀なくされるのだ。