(ふむ、明確な前世の知識や記憶は流出しないようになっているが……まだ確定していない未来に関しては主語さえ濁せば教える事も可能って事か。ま、まだゲーム本編開始前の時間軸だしなァ……本編シナリオが始まる段階になりゃ、こうはいかねぇんだろうけど)

 尋問のようなものを受けつつも完全に自分のペースに引きずり込み、更にはその裏で平然と思考を繰り広げる様は……流石はチートオブチートの肩書きを欲しいままにする男と言うべきか。

「……一つ、聞かせてくれ」
「どうしたぁ、マクベスタっ?」

 推し(マクベスタ)に質問された事が嬉しいのか、カイルの声音が露骨にはずむ。
 それに不信感を抱きつつも、マクベスタはその翠色の瞳でまっすぐカイルを見据えた。

「お前は、どうしてオレ達に助言のようなものをするんだ?」

 ピタリ、とカイルの表情が固まる。しかしそれも見間違いかと思う程、瞬く間にカイルはヘラっと笑った。

「そりゃあ、この世界を愛しているからな。間違ってもこの世界が滅んだり、友達が失意の中死ぬとかは嫌なワケ。勿論アンタ等も。可能な限り登場人物(キャスト)の欠落は出したくねぇの、俺は。だって──この最高の舞台が満員御礼で幕切れ(ハッピーエンド)を迎える事が、俺の一番の望みだからな」

 想像以上に壮大で子供じみた夢物語。だがそれはカイルの本心からの思いであり、ひねくれた心を持つシルフやシュヴァルツでも納得せざるを得ない程純粋な夢であった。

「……お前の言うハッピーエンドとやらに、王女殿下の幸せも含まれているのだな?」

 イリオーデがボソリと問いかけると、

「勿論だとも。俺は友達と仲間は大事にする人間なんでね」

 カイルはニヤリと笑って断言して、

「だからもしアイツに告白したい時とかは相談乗るぜ、俺恋バナとか結構好きだし!」

 ぐっ、とウインクとサムズアップのセットで余計な事を口走る。本日何回目かのサムズアップである。
 その瞬間、シルフによる神速の猫キックがカイルの頬に飛ぶ。「ぶへぇっ!?」と無様な声を発してカイルは長椅子《ソファ》に倒れ込み、赤く腫れる肉球の跡を擦りながらシルフの方をガクガクと見た。