「……アイツが幸せになる為にはとにかく愛される必要があるし、その愛をアイツが自覚する必要があるんだわ。こう言っちゃなんだが、アイツは愛されなきゃ死ぬみたいなところあるからさ」

 まるで寂しいと死ぬ動物のようにアミレスの事を話す。確かに全ての生でおいて愛されなかった上にだいたい死んだアミレスではあるが、愛されないと死ぬ訳では無い。

「さっきから偉そうに語りやがって、お前にアミィの何が分かるんだよ」
「あー……ほら、未来予知出来るって言ったじゃん? それでいくつかの未来の可能性を見たんだよね俺」
「未来の可能性ィ?」

 怒り口調のシルフが凄むと、カイルはまたもや適当な嘘を口にした。それを聞いて胡散臭いなと言いたげな目でエンヴィーが首を傾げる。
 カイルはどこか物憂げに、ニヒルに笑った。

「例えば……冤罪で断頭、裏切られて抹殺。全身バラバラに惨殺されたり、誰かの密命で暗殺されるかもしれない。磔にされて粛清されたり、責任転嫁の末斬首されたり、事故で死ぬかもしれない。アイツが何にも愛されなかった未来には、それだけの色んな可能性が待ち受けてんだ」
「おいふざけるなよ、何でおねぇちゃんにそんなにも死ぬ未来があるんだよ。適当な事言うな」
「残念ながらこれが事実なんだわ。アイツは高確率で死ぬ。それが何となく分かってるから、アミレスも死なないようにーって頑張ってんだろ?」
「……それは、そう……だけど……」

 シュヴァルツが食ってかかるが、カイルにあっさりと丸め込まれる。
 この時、カイルの賭けは成功していた。一体どの基準でこの世界に流出してはならない知識と判断されるのか……その検証も兼ねてカイルはアミレスの死亡原因を話した。
 誰に、という主語を濁して話した結果、カイルはアミレスに待ち受けるいくつかの未来を話す事に成功したのだ。