「ま、そう言うこった。アミレス・ヘル・フォーロイトが幸せになる為の二択は簡単。『家族に愛される』か『家族の愛を不要と判断する』の二者択一だ……で、前者はまぁ無理っしょ? だからギリ可能性のある後者を推し進める為にも、アイツが家族なんかどうでもいい〜って思えるぐらい、アンタ等にはアイツに惜しみなく愛を与えて欲しいんだよ」

 カイルを毛嫌いする面々ではあったが、アミレスの事ならばと大人しくカイルの話を聞いていた。
 本来ならば、初対面のお前がアミレスを知ったように語るな……と一笑に付し、話も聞き流す所ではあるのだが…………初対面にも関わらずカイルの言う事には妙な説得力があるので、皆聞き流す事が出来なかったのだ。

(どうしてアミレスが皇帝にあそこまで嫌われているのか結局どの媒体でも明かされなかったから、皇帝を変える事はまず不可能。幼少期から皇帝にアミレスは使い捨ての道具、って言われ続けたフリードルをアイツが攻略する事もまぁ不可能)

 客人用にと出されていた紅茶の上澄みに口をつけ、カイルは思考する。

(ミシェルと出会って愛を知ったフリードルならまだ『家族愛』もワンチャンあるが…………そもそもミシェルがフリードルのルートに行ったらどっちにしろアイツは死ぬし、多分フリードルのルートに行く事だけは阻止って方向性だろうからな。やっぱり家族愛を求めるルートは絶対無理、選ぶならアイツがそれを諦めるルートなんだが……果たして可能なのかねぇ)

 俺だって未だにカイルの承認欲求に縛られてんのにな、とカイルは肩を落とした。
 転生者達は二度目の人生の主導権を握っているようで、実の所その肉体に残る本来の人格の残滓に蝕まれている。その過去も考え方も知る以上、その残滓を完全に排除する事も出来ないのだ。