「お疲れ。サベイランスちゃん」
《──機能、停止》

 どうやらサベイランスちゃんは声紋認証の魔導具のようで、カイルの言葉一つで起動し、停止するらしい。一体この世界の技術力でどうやってそんなものを作り上げたのか、私には理解が及ばないが。
 確かな土壌で育まれたチートキャラに転生したオタクって、本当その世界からすれば災厄そのものなのね……。
 何て考えているうちにハイラやシュヴァルツが私達を出迎えてくれて。アルベルトやカイルを見て眉を顰める皆に彼等を紹介すると、何故か決まって皆の顔が険しくなる。

「何で俺、こんな行く先々で殺意向けられてんだろ……」
「さぁ……厄日なんじゃない?」

 カイルが悲しげに呟いた。私だってそれは聞きたい。他国……それも休戦協定中の敵国の王子だから? でもたったそれだけの理由でそんな殺気放つかなぁ。
 そして。シルフ、ハイラ、シュヴァルツ、ナトラを混じえて話し合う事に。その間も、全員殺人鬼のアルベルトよりカイルの方を敵視しているようで……それが本当に不思議で仕方なかった。
 改めて皆の紹介をしようと思った時、私は「あっ」と思い出したように立ち上がり、カイルの前に立つ。互いの呼吸が分かるぐらいにまで顔を近づけて、私は小さく日本語で告げた。

「『裏切らないでよ』」
「『──勿論。最後までお前の味方でいてやるよ、仲間だしな』」

 カイルもまた、ニヤリと笑いながら日本語で返してくる。
 ナトラやシルフ達の事を紹介するのに、カイルがそれをハミルディーヒに漏らしたりしては大問題だ。だからその可能性を摘み取るべく、裏切るなと念押ししたのだ。
 カイルは仲間だと言った。同じような境遇の、同じ世界を知る同志……確かに、私達は正確に仲間と言える関係だろう。
 カイルの返答に満足した私は、カイルにナトラやシルフ達の事を紹介し(勿論あのオタクはめちゃくちゃテンション上がってるみたいだった)、次にアルベルトの話へと移った。

 アルベルトは最初私に語った時よりもずっと細かく、覚えている限りの事全てを語ってくれた。赤髪ばかりを狙っていたのはアルベルトの目が赤色以外全て白黒に見えるから、と聞いて……私達の予測は結構外れていた事を知り少し落胆したりもした。
 これまでアルベルトは自分の目にも見える赤い髪を持った人間を、闇の魔力や知り合いの騎士達から教わった剣術で殺して来たと話した。
 正確に心臓を刺せたのは、闇の魔力で心臓の場所を探っていたからとの事。闇の魔力ってそんな事まで出来るのかと背筋がゾッとしたとも。
 そしてアルベルトの話を纏め、この話し合いはアルベルトをどうするか、と言う旨に移行する。