「はぁ……ええと、こちらがイリオーデでこちらが師匠──エンヴィーさん。最後にこちらがマクベスタよ」
「イリオーデ。王女殿下の騎士だ」
「人間相手に名乗る名はありませーん」
「……マクベスタ・オセロマイトです」

 え、ちょっとどうしちゃったのこの人達。反抗期?
 つっけんどんではあるが一応挨拶したイリオーデとマクベスタはまだいいとして、師匠ほんとにどうしたの。そういう感じのヒトでしたっけ貴方??
 何で皆こんなにカイルの事を毛嫌いするんだ……?

「まぁ、とにかくよ。今から皇宮に帰ろうと思うんだけど…………アルベルトって、皇宮まで連れて行っても大丈夫かしら」
「アルベルトってあの犯人? ……って、え、サ──もがっ?!」
「そうよ殺人鬼よだから今は黙ってて!!」

 アルベルトの顔を見て、カイルの奴がサラと叫びそうになった。その為カイルの口を勢いよく塞ぎ、物理的に奴の口を封じる。

(何、急に!?)

 そう言いたげに目に困惑の色を浮かべているカイルに、こちらも目で訴えかける。
 私もカイルもサラなんて人物は本来知る筈が無いのだから、下手な真似をしてはならないのだ。それなのにこいつは!
 キッと強く睨みをきかせると流石のカイルも察したのか……急に大人しくなり、その後は暫く黙っていてくれた。
 不機嫌なイリオーデ達とアルベルトの事について話し合い、一旦皇宮まで連れて行って改めて事情聴取をし、処遇を決めよう。という事になった。
 それじゃあ皇宮まで帰りましょう、となった時。「あのー」とカイルが控えめに挙手した。

「皇宮になら瞬間転移出来るけど、やる?」
「……本当に?」
「ハミルディーヒから手紙送れてたんだから、これぐらい余裕だっつの」
「お願いしていい?」
「おまかせを〜」

 自信満々に胸を叩くカイル。何やらちょっと事前準備がいるとかで、カイルはおもむろにサベイランスちゃんを弄り始めた。そして相変わらず時が経てば経つ程どんどん不機嫌になるイリオーデ達。
 すると突然師匠が後ろから覆い被さるように体重を掛けてきて。

「ひーめーさーん、何でアイツと仲いいんすか。初対面でしょー?」
「……師匠、ヤキモチ焼いてるの?」
「だったらなんすか。妬いてたら慰めてくれるんですか?」
「うーん、本当に妬いてくれてるのなら慰めたかも」

 ぶすーっとむくれる師匠の顔を下から見上げる。
 師匠は精霊だもの、人間相手に嫉妬とかしないでしょう。そもそも、師匠が不機嫌なのは私がまた無茶な事したからだろうし。
 ……そう考えると、あれね。ヤキモチ焼いてるの? とか私今どんだけ恥ずかしい発言したのよ。自意識過剰すぎないかしら?
 師匠がノッてくれなかったら自意識過剰で恥ずか死してたかも。