「絶対捕縛魔法ってのは、この為だけに俺が用意して来たオリジナルの魔法だ。お前から赤髪連続殺人事件の話を聞いて急きょ用意したからまだまだ改善の余地はあるがな。その名の通り、目標を一度捕捉したら何がなんでも捕縛する魔法だぜっ」

 カイルは親指を立ててドヤ顔と共にウインクをした。凄いんだけど、凄いんだけど……何かムカつくな。
 感心を通り越して呆れすらした私は、額に手を当てて項垂れる。
 するとカイルが恥ずかしげに頬をポリポリと掻いて、

「……なんつーか、あれだな。オフ会みたいだなこれ」

 視線を泳がせてからはにかんだ。
 こいつの情緒ジェットコースターかよ。……でもまぁ、その気持ちは分からなくもない。これまでずっと手紙でだけやり取りしていたから……お互いゲームをやっていたから顔は知っていたものの、こうして会うと何だか感慨深いものがある。
 それに、カイルのお陰で無事犯人を捕まえられたんだ。あまり悪く言うのも恩を仇で返すようなものか。

「……そうね。改めて……初めまして、カイル。私はアミレス・ヘル・フォーロイトよ」
「おっ、こちらこそ初めまして。俺はカイル・ディ・ハミル。これから仲良くしようぜ」

 ゆっくり立ち上がり、カイルに握手を求める。するとそれを察したカイルはゲームで何度も見た眩い笑顔で、握手に応じた。
 そしてカイルは暫く私の顔をじっと見つめていて。

「なぁ、今更なんだけど……お前その髪どしたん? 何で銀髪じゃねーの?」
「……それでずっと私の顔見てたのね。潜入捜査の為に変えてもらってるのよ、友達の精霊さんに」
「精霊?! 精霊と仲いいのお前!? すげぇな!」
「こっちからすれば独学であんなの作るあんたの方が凄いわよ……」

 こんな夜中なのにやたらと元気なカイルと気の抜けるような話をする。ゲームではスパダリ枠の影のあるクールイケメンだったのになぁ…………目の前のカイルはただの無邪気で元気な少年だよ。あぁ、れみぜらぶる……。
 やはり現実はそう上手くいかないものなのだと世の無情さを嘆いていると、ふと女の子の様子が気になって振り向いた。女の子は先程の私達の名乗りを聞いていたのだろう。
 今や恐怖や寒さとはまた違う理由で青ざめ震えているようだ。