氷の国らしく皇族には代々氷属性の魔力が発現するのだが……なんと私には氷の魔力は無い。私にあるのは水の魔力だけなのだ。
 だから皇帝に嫌われてるんじゃないかなと私は予測している。何せ皇帝がアミレスを嫌う理由なんてゲームでは明かされなかったから。
 いざアミレスになってからその理由を考えて出た答えが、皇族なら持っていて当然の魔力を持たないから……なんじゃないかなという事だ。
 フォーロイト帝国の皇族特有の魔力と言われるだけあって、なんと氷の魔力は我が一族以外では発現しないらしい。似たものとして雪の魔力だとか水の魔力はあるが、『氷』の魔力は本当にフォーロイト一族特有の魔力なんだそうだ。
 そもそもこの世界は、魔力を持っていればどんな属性の魔法でも使えるという訳ではなく、それぞれが生まれ持つ一つの魔力の属性の魔法しか扱えないのだ。
 稀に複数の属性を併せ持って産まれる人もいるが、その人は余程相反する属性同士でも無い限り、その二つ両方の魔法を扱えるとか。
 …………まぁ、中には、ほぼ全属性の魔力を所有し尚且つ扱えるチートオブチートな奴もいるんですけどね。攻略対象の一人なんですけども。
 そんな奴でさえ希少属性の光と闇、亜種属性の中のいくつか(氷含む)、そして加護属性(ギフト)は持っていないそうだ。

 実は本当に凄い血筋なのだ、フォーロイトは。
 だからこそ、何故か氷の魔力を持っていないアミレスが冷遇されるのもやむ無しというか……でも別に氷の魔力が無かろうと愛してあげる事は出来たでしょ。
 なぁんで愛してあげなかったんだよまったく……。

「どうしたの、アミィ。そんなに頬を膨らませて」
「え、そんなに分かりやすかった……?」

 皇帝への不満が形となって現れていたらしい。私の頬はいつの間にかぷくりと風船をつくっていたのだ。
 両手のひらを頬に押し当ててそれを無理やり抑えていると、猫シルフがこくりと頷いて、

「うん。何か嫌な事でもあったの?」

 つぶらな瞳を向けてきた。その可愛さに胸をときめかせつつも、

「…………皇帝の理不尽さを思い出してちょっと……ね?」

 口元に手をあててまるで耳打ちするかのようにして伝えると、シルフが「ははっ」と楽しそうな声をあげ、

「それは確かに嫌にもなるね!」

 爽やかな声で同意していた。その後、「あー紅茶が美味しいなぁ! やっぱり人の不幸は蜜の味だねっ!!」とよく分からない事を言っていた。
 そういえばシルフってよく紅茶がどうこうって話をするけれど、猫って紅茶飲んでも大丈夫なのかしら……いやでも精霊さんだから普通の猫じゃないし大丈夫なのか?
 今も尚軽快な笑い声を飛び出させる左肩の猫を横目に見つめると、ふとした感想がこぼれてしまった。