「内緒にするって約束してたんすけど……まぁ仕方ないか。シャンパージュ家っすよ。昨日一日、お嬢さんと夫人といたんすよ」

 師匠が昨日いた場所、それを聞いて私は緊迫感を覚えた。そこが予想外の場所であった事、そして先程証明された被害者の共通点の事を踏まえても納得の行く場所だったから。
 シャンパージュ家……だと? そんな、じゃあ、本来の犯人のターゲットはもしかして──

「──犯人に狙われてたのは伯爵夫人だったの……!?」

 私は驚きのままに、それを飲み込む事無く口にした。
 それには皆も一斉にザワついた。中でもハイラは私の発言や集めた情報から被害者の共通点に辿り着いたようで。

「っ、姫様……まさかこれは、赤髪の人間を狙った連続殺人……と言う事ですか?」
「……えぇ、確実にそうよ。これまでの被害者も差は大きいけれど全員赤系統の髪の人よ。そして師匠は真っ赤な髪で、伯爵夫人は朱色の髪だわ……どちらも犯人に狙われてもおかしくない」

 そう。これまでの被害者六人、全員が赤系統の髪色だった。
 一人目が赤茶色、二人目が赤橙色、三人目が赤紫色、四人目が臙脂色、五人目が金赤色、六人目が茜色…………そして七人目に選ばれた伯爵夫人の髪は朱色で、伯爵夫人と間違われて刺された師匠は綺麗な紅色。
 わざわざハートのトランプが使われていたのは心臓を刺すという意味だけでなく、その赤髪を狙うという決まりに合わせているのだろう。
 ……てか待って、赤髪連続殺人事件って何かどっかで聞いたような、気が……。

「あぁああああああああああっ!!?」

 私は頭を抱えて叫んだ。思い出した、本当に大事な事を思い出してしまったのだ。
 これ、フリードルのルートで出てきたやつ! フリードルが過去に捕り逃した殺人鬼がフリードルのルートでもう一度連続殺人事件をやり直すやつじゃん!!

 皇太子としての冷徹なフリードルの一面が見られる上に、ミシェルちゃんへの想いを少しずつ自覚し始めるフリードルのルートの大事なイベント! それに繋がる第一次赤髪連続殺人事件が今起きてるって事?!

 確かゲームでは残り四人って所で犯人がフリードルに追い詰められて、数年間姿を隠すのよね。それで数年後、ゲーム本編が始まってから犯人がまた動き出して残り四人の殺害を始めると…………。
 フリードルのルートとかどうでも良すぎて今の今まで忘れてたんだけど?! え待ってどうしようこれ少なくとも後三人は確実に死ぬじゃん! それで数年後にまた三人死ぬ!

「あ、アミィ? 急にどうしたの?」
「姫さん、何か変なものでも食いました?」
「アミレスが壊れたのじゃ……」
「おねぇちゃんがこんなに叫ぶなんて珍しい……」

 突然叫び出した私にシルフと師匠が心配の眼差しを向けて来て、ナトラとシュヴァルツが困惑の色を浮かべる。