「──という訳で緊急会議を始めたいと思います。皆さん準備は宜しいかね?」

 場所は私の部屋。あの後一旦眠って、朝になってから私は緊急会議を執り行った。
 面子は、私、ハイラ、マクベスタ、ナトラ、シュヴァルツ、シルフ、師匠。議題は勿論、昨夜の師匠の事。

「ええと、まず昨日俺は用事があったんで昼からちょいと休みを貰ってたんすわ。で、夜までそれがかかっちまったもんだからすぐに帰ろーって精霊界に行こうとしたら、突然前の方から変な奴が近づいてきて。気がついたら心臓刺されてましたね。刺された瞬間に、とりあえず逃げようと考えた俺は短剣《ナイフ》を回収される前に逃げ出して帰って来たんすよ」

 師匠から改めて事の顛末を聞き、私達は頭を抱えていた。色々とツッコミどころが多い。

「精霊を剣で殺せる訳もなかろうに、その犯人とやらは馬鹿じゃな」
「あは、ここまで人間に擬態してる精霊を一目で看破出来る人間なんてそういないよぉ? だから多分、犯人は気づかなかったんじゃぁないかな?」
「……それもそうか。こやつは人間の目から見ればただの変な格好をした変な奴じゃったな」
「そうそう。目立ちたがりの変なおっさんだよぅ」
「なァお前等、俺になんか恨みでもあんのか??」

 ナトラとシュヴァルツがお菓子を頬張りながら仲良く話し合い、どこか物寂しげな師匠がそれにツッコミを入れる。
 ナトラがシュヴァルツを中心に皆とも仲良くやっている事は私としても喜ばしい事なのだが、何だかシュヴァルツと共に道を踏み外してしまいそうで心配だわ。
 シュヴァルツってば私以外の人には妙に毒づくからなぁ……何でって本人に聞いても『なんとなく?』って笑顔が返ってくるだけだ。
 私がその笑顔に弱いと知っての事か……そう何度も何度もその笑顔で私が納得すると思っ…………仕方ないなぁ!
 みたいなやり取りを繰り返し、私はもうシュヴァルツの更生は諦めた。皆に対してちょっと辛辣なだけだし、そこまでの害は無いと踏んだのだ。

「とにかく、重要なのはエンヴィーが刺された事自体じゃなくて、例の殺人事件がまだ続くって事でしょう? アミィとハイラはこの事についてどう思うの?」

 ポンっと肉球で机を叩いて、シルフが話題を変える。猫のつぶらな瞳は私とハイラに交互に向けられた。
 一口お菓子を齧って、まず先に私が見解を述べる事にした。

「犯人は師匠が精霊である事に気づけず、七人目の被害者にしようとした……がしかし、師匠は心臓を刺されたぐらいじゃ死なず、心臓を刺された状態で七人目の被害者は逃走。きっと今頃犯人はかなり焦ってるでしょうね」
「考えられる今後の犯人の行動は、エンヴィー様を探し出して凶器の回収ないし殺害の再度挑戦……それかエンヴィー様の事は無かった事にして、改めて七人目の被害者を作り出すか、でしょう」

 私の言葉に続くように、ハイラが顎に手を当てて意見を述べる。
 これがトランプを用いた連続殺人事件である事は誰もが知る所であり、同時に後七人は殺される事が確定している。トランプはキングまである……エースから始まったこの殺人事件が中途半端な所で終わる筈がない。