「最近本当に物騒だな……ディオ達が巻き込まれたりしなければいいんだが」
「貧民街の子供が一人犠牲になったみたいだものね、やっぱり心配だわ……」
「とにかく身内が巻き込まれない事を祈るばかりだな」

 珍しく日中からかなりの吹雪となったので、私はマクベスタと共にお茶をしていた。勿論息抜きである。
 そこで今朝の新聞を手に話していたのだが、マクベスタが物凄くフラグっぽい事を言い出した。どうしようこれほんとにフラグ回収しそうで怖いんだけど!
 と内心勝手に焦り出す私。マクベスタのフラグ建設の所為だろうか、何だかとてつもなく嫌な予感がする。絶対、何かが起こる気がする。

 そう思いつつその日は何とか眠りについた。妙な胸騒ぎの所為で中々眠れなかったのだ。
 スヤスヤと眠りについていた所で、何者かが私の体を揺らして来た。一体何なんだ……と思いながら体を起こすと、そこには今日一日お出かけしていた師匠が立っていた。しかし、暗くて何も見えない。

「ししょー、こんな時間にどうした……の……」
「ほんとすみません姫さん。ちょっとどうしても伝えなきゃならねぇ事が出来まして」

 眠い目を擦っていると、師匠が「これなんすけど……」と言って少しだけ火を出し、自身の体を照らした。
 それを見て、私は眠気が吹っ飛ぶ程の驚愕を覚えた。

「俺、なんか刺されたみたいなんすよね。さっき街で急に変な奴に刺されて……折角なんで剣《コレ》回収される前に走って逃げて来たんすけど」

 ──師匠の胸元に、短剣《ナイフ》が刺さっている。
 フラグ回収早すぎだってぇ! 半日? 半日かそこらで回収してるじゃないの!!
 てかなんでこのヒトこんなにケロッとしてるの? 心臓刺されてるよね!?

「なんかァ、この前姫さんが読んでた新聞にこんな感じの事件の事書かれてたなーって思って。この短剣《ナイフ》も何かに使えるんじゃないかって」

 そう話しながら師匠は空いた方の手でその短剣《ナイフ》を引き抜いた。そこから血が溢れ出したものの、師匠の体外に出た瞬間、彼の血は全てが燃え尽きた。
 師匠は何を考えているんだ……? 何で、役に立つかなーで心臓に刺された短剣《ナイフ》をそのままにダッシュで逃げるんだろう。まず抜けばいいのに。
 精霊さんってやっぱ人間とは違うんだなぁ……価値観とかそういうのが……。