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「これでもう六人目かぁ。帝都の警備隊は何やってるのかしら」

 新聞を読みながら私はそんな呆れを呟いた。
 一面に大きく書かれるは、今帝都を恐怖のどん底に叩き落としている連続殺人事件の被害者。犯人の特徴は全く分かっておらず、これが連続殺人事件だと判断しているのも全ての現場にトランプが置かれているから……なんて理由らしい。
 まぁ実際に、被害者が増える程徐々にトランプの数字も大きくなっていってるのだ。

 一人目は商店を営む中年男性、トランプはハートのエース。
 二人目は花屋で働く若い女性、トランプはハートの2。
 三人目は貧民街の痩せた子供、トランプはハートの3。
 四人目は帝都に来ていた旅人、トランプはハートの4。
 五人目は足が不自由なご老人、トランプはハートの5。
 六人目は兵士を目指す好青年、トランプはハートの6。

 そんな風に新聞で公表されており、殺害方法は全て心臓を一突き。その心臓に、凶器とされている短剣《ナイフ》の代わりとばかりにトランプが刺されているのがこの事件の特徴。
 全てが夜中のうちに行われている犯行の為、近頃では日が暮れてからは誰も外出しなくなったとか。
 皇帝がいなくなった途端荒れまくるわね〜、この街。憎らしいけど抑止力としては本当に最強なのね、あの男。