「お相手は男性ですか?」
「は、はい……」

 私が恥ずかしがりながら答えると、店員さんは満面の笑みで「でしたらこちらの商品が──」と色々オススメを教えてくれた。
 相手がオセロマイトの人だからオセロマイトの物を贈りたくて、と事情を話したら店員さんは瞳を爛々と輝かせて更に熱く商品の解説を行ってくれた。
 あまりにも熱意が籠ったプレゼンの数々に、私は途中から完全に気圧されていた。
 そして肩から提げていた鞄に入っている猫シルフが段々飽きてきたようで、一定の間隔でびしびし脇腹を小突いてくる。
 しかしその間も店員さんの熱烈なプレゼンは続き、入店してから三十分程が経ってようやく私は誕生日プレゼントを決める事が出来た。
 選んだ物は、普段使いしやすそうなハンカチとティーカップと茶葉。ハンカチは四隅にオセロマイト特有の刺繍があしらわれており、ティーカップはオセロマイトらしい模様で彩られた物。茶葉もまた彼が慣れ親しんでいるであろうオセロマイトの特産品。
 実にオセロマイトに染まりきったプレゼントだ。
 それを店員さんが随分と丁寧に包装してくれて、とても可愛らしい見た目となった。
 そしてお会計時、合計氷銀貨二十枚と言われ私はついつい「安っ」と声に出してしまった。それに会計担当の店員さんが、「うちは安く素晴らしい物を、がモットーですから」と歯を見せて笑った。
 あの品質だからてっきり氷金貨五枚ぐらいは行くだろうと思っていたのだが…………予想以上に安かったので、この店凄いなぁと思いながら氷金貨を一枚出して店員さんを困らせてしまった。

 だって私、今お金は氷金貨しか持ってないんだもの。こう見えて王女だから……お小遣いというか支給される予算の最小単位が氷金貨なのよ。
 ええと……確か最も価値のある通貨が氷晶貨(ひょうしょうか)(氷水晶と呼ばれるこの国でしか取れない貴重なものを使用した通貨)で……。
 氷晶貨一枚で氷金貨百枚分の価値があり、氷金貨一枚で氷銀貨百枚分の価値があって、氷銀貨一枚で氷銅貨五十枚分の価値があるのよね。
 これが氷銀貨二十枚なら今氷金貨を出した事により、これから八十枚近い氷銀貨がお釣りとして返ってくるのだが…………めちゃくちゃ重いな……この国の通貨意外としっかりとした重量があるのよ、偽造対策として。
 八十枚もの氷銀貨があれば相当な重さになるのだけれど、本当にどうしよう……。