私達は今、非常に厄介な問題に直面している。それはそう──フリードルがついに私を敵対視し始めたのだ。
 今の今までフリードルは私を歯牙にもかけなかったのに、ここに来てついに動き始めた。……まぁ、正確には皇太子派閥の貴族が勝手に私に危害を加えようとした、って話なんだけどね。

 貧民街大改造計画が本格始動した頃から、あのシャンパージュ伯爵家が野蛮王女についた! と社交界では大賑わいらしい。
 一度も会った事も無ければ話した事すらない貴族達から続々とパーティーへの招待状や贈り物が届いたので、全部ハイラに任せて処理して貰った。
 だってあれ、シャンパージュ伯爵家と仲良くなる橋渡しをしろーっていう賄賂でしょう? 嫌よそんなの。私から橋渡しをしてあげるって言うならまだしも、橋渡しをしろって頼まれるのは凄く嫌だわ。

 本当に仲良くなりたいなら自分の力で仲良くなりなさいよ。私は手を貸してやらない。そう決め込んで全ての招待状と贈り物を無視した。
 そしてどうやらそれが原因で、何を杞憂しているのか知らないが、皇太子派閥の貴族が私を消そうと暗躍したらしい。
 だがそれは失敗に終わった。
 東宮に侵入者が現れたのだが、その時私は出掛けていて……帰って来たら気絶した人達とその横で駄弁るナトラとシュヴァルツがいた。何があったのか二人に聞いた所、

『アミレスを狙った侵入者が現れたから我等で対処しておいたのじゃ。凄いじゃろ、偉いじゃろ? 我を褒める事を許してやるぞ、アミレスよ』
『ちゃあんと裏で手を引いてる奴の事や色んな情報も引き出しておいたよぉ、えっへん!』

 と言いながら期待に満ちた目で見上げて来たものだから、私はとりあえず二人の頭を撫でて、良くやったねと褒めてあげた。すると二人共満面の笑みとなり、それ以上は侵入者の事も話さなくなった。
 その後用事から帰って来たハイラにこの事を話して、ハイラからケイリオルさんに『侵入者が現れた』と話が行った。
 侵入者はケイリオルさんと騎士達が回収して行き、ケイリオルさんの方でこの件は片付けてくれたのだとか。

『これはれっきとした反逆罪です。皇宮に侵入した事に加え、それを他者に依頼した事実のみでも罪に問えます。ですので御安心を……必ずや、この者共には然るべき罰を与えます』

 そう私に向けて宣言し、ケイリオルさんはその翌日には裏で手を引いていたモルソン伯爵とやらを裁判に引きずり出してみせた。
 モルソン伯爵は皇太子派閥の貴族で、シャンパージュ伯爵家を取り込んだ(誤解を生む言い方だな)私がフリードルの邪魔になると思い、皇帝が帝都にいない今がチャンスと私を始末しようとしたらしい。

 だが実行犯たる男達は死刑。モルソン伯爵も有罪判決からの爵位剥奪からの全財産没収からの終身投獄というフルコンボでこの件はあっさり幕を閉じた。
 それもこれも、シュヴァルツが侵入者からありとあらゆる情報を引き出しておいたお陰らしい。