「……ちっ……アミィ、早く行こう。お店までもう少しでしょう」
「え? あぁうん、分かった」

 シルフに突然そうやって急かされ、私は早足で地図の通り進む。
 沢山人がいて、陽の光もよく射し込む明るい道だった。危険な事なんて何も無さそうな、そんな道。
 その通りの途中で、私は目的の店を発見した。
 大商会が運営する、オセロマイトに限らずフォーロイト帝国の友好国諸国の品々を取り扱うお店で、フォーロイト帝国から出た事の無い人達にとても人気なお店らしい。名を『ザ・トリップ』と言うそうで……恐らく、直訳して旅と言う意味なのだろう。
 そのお店は外から見ても店内は大賑わいで、店員さんも店内をぐるぐる動き回っていて、今お店に入っても大丈夫なのかと心配になった。
 これ以上忙しくしてしまっていいのだろうか、と。
 そうやって逡巡しながらお店の前をウロウロしていると女性の店員さんが突然出てきて、

「お嬢さん、当店にご用事でしたらどうぞお入りください!」

 と声をかけてきた。そして私が答えるよりも前に店員さんによって店内に連れ込まれてしまう。
 店内は外から見えていた通り人でいっぱいで、色とりどりの様々な商品が陳列されている。それを物珍しそうに瞳を輝かせて手に取るお客さんと、商品の説明をする店員さん。
 ここは、とても活気に満ちていた。

「すみません強引にお連れしてしまって……でもお嬢さんみたいな綺麗な女の子が一人で外にいるのは危ないと思いまして……」

 店内をキョロキョロと見渡していた私に向けて、先程の女性店員さんが頭を下げてきた。…なんだろう、今日はそういう日なのかしら。沢山アミレスの容姿が褒められる日?

「……私、オセロマイト産の物を見たいのですけれど……案内をお願いしてもいいですか?」

 こうしてお店に入ったのなら目的を果たさねばなるまいよ。しかし人がごった返す店内で右も左も分からない私がオセロマイト産の物がある区画を見つけられる訳がない。
 ならばもう店員さんに聞くしかない。丁度、声をかけてくれた店員さんが隣にいるのだから。

「オセロマイト産の物ですね、それでしたらあちらになります。ご案内致します」

 店員さんはニコリと営業スマイルを作り、人の波を綺麗に掻き分けて進む。私はただその後ろについていただけで、何一つ苦労する事無くオセロマイト産の区画に辿り着いてしまった。

「この辺りは日用品や装飾、あちらが衣類等です」

 店員さんの説明通りこの区画には確かにオセロマイト産の物しかなく、その大まかな使用用途等によって分けて商品を陳列しているらしい。
 それらの商品を見て、私は頭を悩ませる事となる…………どれも魅力的なのだが、これは私の物ではなくマクベスタへの誕生日プレゼントなので、何を贈ればいいのか全く分からないのだ。
 こんなにも選択肢が多いとは思っていなかった……まずいな……。
 顎に手を当ててうーんと唸っていると、店員さんが生暖かい瞳で尋ねてきた。

「贈り物ですか?」
「えっ?! あ、はい……その、友人の誕生日プレゼントを用意しようと、思いまして……」

 突然ズバリ言い当てられてしまい、私は少しどもってしまった。……だって仕方ないじゃない。言葉に出してもいないのに、贈り物と気づかれるなんて思わなかったんだもの。