「イリオーデ、お前、本当にいいのか? 団長だぞ? こん中で一番強いお前がやるべきだろ?」
「いやいい。管理職など名誉と権力以外何も無いものだ。それに、立場があるといざと言う時好き勝手動けぬだろう。私はいついかなる時でも王女殿下のお言葉に従えるよう、ある程度自由の効く立場でありたい」
「お前本ッ当にブレねぇな!」
「何だ、やりたくないのか? 王女殿下がお前に任せて下さると言っているのだぞ。大人しく拝命しろ」
「なんだコイツ横暴過ぎる」

 自分なりの価値観をもって団長にはならないとハッキリ言い切るイリオーデと、それに食って掛かるディオが賑やかに言い合う。
 それにしてもこの中で一番強い事は否定しないのね、イリオーデ……確かな事実なんだろうけども。
 まぁとにかくだ。私は団長が決まったならばやろうと思っていた事がある。その為にごほんっ、と咳払いをすると、ディオ達も言い合いを中断してこちらに意識を向けてくれた。

「えーっと、それでは改めまして──私《わたくし》、アミレス・ヘル・フォーロイトの名において、この場にて我が剣となる私兵団の結成を宣言する! これを束ねし者ディオリストラスよ、前に」

 彼等を見上げて私は堂々と宣言する。突然こんならしくなく喋り出したものだから、皆が唖然と口を開けている。
 ディオはどこか混乱した面持ちのまま前に出て、そして片膝をつき頭を垂れた。

「…………今日この時より、お前に我が私兵団を統率する役目を与える。我が私兵として恥じぬよう精進せよ。そして、お前達が最も誇れる己となれ。良いな」
「ハッ、不肖ディオリストラス……この大役、仰せつかりました!」

 騎士の叙任式のような、荘厳な空気が流れていた。何となく形から入りたかった私が始めた、このささやかな結成式。
 あれだけイリオーデと言い合っていたのに、いざとなれば団長としてこんなにもちゃんと役目を果たしてくれるなんて。ディオのポテンシャルの高さは流石のものだ。
 そんなディオがスっと顔を上げて、歯を見せて笑う。

「──これからもよろしくお願いしますわ、殿下」

 それはまるであの夜の……私を信じて手を取ってくれた時と同じような、そんな笑みだった。
 だから私も笑った。彼の期待と信頼に答える為に。私なりの返事として、

「──勿論よ。私を信じてくれた事だけは、絶対に後悔させないわ」

 あの夜と同じ言葉を吐いた。
 これが私の……彼等彼女等への宣誓だから。