「──……様。アミレス様。制服の方は見に行かれないのですか?」
「っえ? あぁ、ごめん。ぼーっとしてたわ」

 考え事に耽けぼーっとする私を覗き込むように、メイシアが上目遣いで見つめてくる。……考え事に集中し過ぎていて気づけなかったみたい。
 それじゃあ制服を見に行きましょう、とメイシアに伝えると彼女は嬉しそうに「はい、行きましょう!」と応えてくれた。

 伯爵夫人に一礼してから部屋から出て、メイシアに着いて行く。私達を案内するメイシアの横顔が本当に楽しそうで…………ゲームでは人形そのものとばかりの無表情しか見れなかったから、何だかこうして年相応に笑う姿を見られて本当に嬉しい。
 これでこそアンディザのシナリオの基盤《ベース》を変えた甲斐があるというものだ。

 とは言え、現時点で私が変えられたものはメイシアの性格とマクベスタの実家の件のみ。他は全然……というかぶっちゃけ変え方が分からない。大公領の内乱はまだ先の話だから今の私にはどうしようもないし。
 ああでも、もう一つだけあるか、ゲームから変わった事──。

「こちらですアミレス様! 当商会の威信をかけて完璧に仕上げました!!」

 メイシアの声に引かれ、顔をバッと上げる。するとそこには私が思い描いた通りの制服があって。一つ一つサイズが違い、男女で制服の差異もある。
 制服のモデルとなったのはいつか見た西洋の軍服。それをベースにこの世界──西洋風ファンタジーな世界観を壊さないように美しい刺繍や飾緒が銀色のもので施され、胸元の釦には本人達の希望から月の模様が刻印されている。

 生地の色はほとんど黒に近い濃い青で、袖や襟などに差し色として程よく明るい青が使われている。この色を指定したのも本人達だ。
 ブーツもソードベルトもマントも併せて作ったので、全体的にきちんと統一された落ち着きのあるかっこいい色合いに収まっている。
 私が考えたのは本当に大元のデザインだけで、細かい色はイリオーデ達に聞いて決めたのだけど……なんか本当にえらいかっこよくなったな。
 我がデザインもさる事ながら(自画自賛)、黒と青ってもうめちゃくちゃかっこいい配色よ。イリオーデ達天才じゃないかしら。