また遊びに行かせて貰うねとメイシアとも約束し、ようやく皇宮に戻る時が来た。シルフと師匠は一旦精霊界を経由して皇宮に入ると言い姿を消した。ナトラもいる事だしどうやって皇宮に入ったものか……と悩んでいた所でシュヴァルツがニヤリと笑い、

「じゃあぶっ飛んじゃおっか!」

 空間魔法、瞬間転移を発動した。それが光瞬いた直後、ゆっくりと目を開くとそこは見慣れた皇宮の裏手。いつもの特訓場だったのだ。
 ピースサインを作り得意気な様子のシュヴァルツの頭を撫でてありがとうと告げると、シュヴァルツは「えへへっ、どーいたしましてー」と明るく可愛く笑った。
 そんなこんなで私の家、皇宮が東宮に足を踏み入れると。程なくして仕事に勤しむハイラと出会った。彼女は私の姿を見た瞬間、今にも泣き出しそうな顔でホッと胸を撫で下ろし、美しく上品な礼をした。
 そして彼女は涙ぐむ声で出迎えの言葉を紡ぐ。

「──お帰りなさいませ、姫様。無事のお帰りを、心より願っておりました」
「……ただいま、ハイラっ」

 おかえりなさいといってくれた彼女の懐に私は飛びついた。いつもならはしたないと諌言を呈すハイラもこの時ばかりは大目に見てくれたようで、突然抱き着いた私の事を優しく抱き締めてくれた。
 ああ、私はようやく帰って来たのだ。長いようで短いオセロマイト王国救出の旅から…………無事、生きてこの家に帰って来れたのだ。


 この時の私は……右も左も分からずがむしゃらに努力するしかなかった六年を経て余裕が生まれ、六年目にしてようやく、ある程度ちゃんとした計画を立てられて満足していた。
 だから考えもしなかったのだ。私以外にも転生者がいて……その人によってもっと大胆に、大規模に、この世界の運命が捻じ曲げられつつある事を、全く考えもしなかったのだ────。