例の五人攻略必須の攻略制限が解除されると、そもそもの選択肢が増え、ハミルディーヒ王国王都に行くタイミングでフォーロイト帝国帝都に行けるようになるのだ。
 帝都に来たミシェルちゃんはついに、皇太子のフリードルと亡国の元王子のマクベスタと出会う。
 後、何故か攻略対象じゃないと話題になったサブキャラ、フリードルの側近のレオナード・サー・テンディジェルとも出会う。

 あいつ本当に顔が良くて爽やかでミシェルちゃんをまるで妹のように可愛がってくれた良い奴なんだよな…………もしかしたらレオ(レオナードの愛称)は隠し攻略対象かも! と淡い期待を寄せてゲームを進めて玉砕したオタクは数知れず。
 話は戻るが……帝国組とのイベントシーンは基本的に雪解祭や建国祭や舞踏会等の帝都内で済む範囲に抑えられている。
 勿論厄災は襲いかかるけど、なんと帝国組のルートでは戦争が起きない。戦争が起きない分とんでもなく濃いシナリオをしてやがるのだ。

「……大公領の内乱って確か本編開始一年前……つまり今から二年後。その内乱で確か──レオの妹が死ぬのよね」

 カリカリとペンを走らせ、私は目下一番の大事件、大公領の内乱について覚えている限りの事を記していく。
 フリードルの側近となる男レオナードは、我が帝国が誇る最大の盾、テンディジェル大公家の人間だ。白の山脈に面する帝国の領土は同時に大公領であり、白の山脈から来たる魔族の脅威から日々帝国を守っているのがテンディジェル家なのである。
 そんな家に生まれたレオナードは戦う事よりも頭を使う事に才が秀でていた。それも──皇帝直々に登城せよと言われる程に。

 テンディジェル家で学んだ兵法や戦法に加え、持ち前の頭脳がある為……レオナードはある種の軍師としてフリードルの側近となり、その頭脳と才覚を帝国に捧げていた。
 だがしかし、はっきり言って二人の主従関係は上手くいっていなかった。レオナードは登城する半年前に領地の内乱で愛する妹を亡くし、失意の中強制的に登城させられたからであった。
 その後本格的に次期皇帝としての公務につき始めたフリードルの補佐の為に側近となった。
 何よりもレオナードがフリードルを嫌う理由が、アミレスを蔑ろにしている事だった。自分の妹は内乱に巻き込まれて死んだというのに、自らの手で妹を殺そうとするフリードルを理解出来ないと……レオナードはフリードルを酷く嫌悪するのだ。

 しかしそのような理由であのフリードルから逃れられる筈も無く。フリードルのルートではハッピーエンドでもバットエンドでも、レオナードはその感情も心もフリードルの魔剣極夜の能力で凍てつかされて、ただフリードルの命令に忠実に従う人形のようになる。
 そしてアミレスは死ぬ。うーん、絶対駄目だね。確実に回避しないと。
 フリードルの手勢を減らす目的とレオナード自身を守る目的として、私としては何としてでもレオナードをこちら側へ引き抜きたい。あの頭脳は味方に欲しいのだ。
 例えミシェルちゃんがフリードルのルートに進まずとも、レオナードが登城してフリードルの側近になる事は二作目の世界である以上変わりないのだ。