「……っ、なんで、許してくれないのよ……! なんで、お父様も兄様も……私は、殺せないの……っ!!」

 この体はそれを許してくれない。どれだけ憎くて憎くて憎くても、私はあの二人を殺す事だけは出来ない。アミレスが、それを許してくれないのだ。
 熱くなった目頭から涙が溢れ出す。震える両肩を掴んで身を小さくする。
 何も家族に愛される事だけが幸せの形ではないのに。それなのにどうして貴女はそんなにもあんな家族に固執するの? どうして他じゃあ駄目なの? 貴女にとっての幸せは、本当に父親と兄に殺される事なの?

「私は……っ、死にたく、ないよ……! めいいっぱい長生きして、最高に楽しくて……幸せだったって、そう、最後に笑って死にたいの…………! 散々嫌われて、利用されて、棄てられる人生なんて……そんなの嫌だよ……っ」

 嗚咽と共に心情を言葉にして繰り出す。
 最近になって、初めて死を実感して。私は、予想以上に自分の中に死にたくないという思いがある事を知った。
 アミレスの悲運を知るからかもしれないが、絶対に死にたくないと……強くそう思う。誰かに殺されるのではなく、天寿をまっとうして意味のある人生だったと笑顔で死にたい。そう思うのだ。
 それなのに──

「…………なんで、私にはそれが……許されないのかなぁ……っ」

 ──その結末(ハッピーエンド)は許されない。アミレスにはあの結末(バットエンド)しか許されないのかもしれない。
 ああでも、もしかしたら…………あの結末だって。アミレスにとっては──ハッピーエンドだったのかもしれない。
 私達からすればバットエンドでも、本人とってはハッピーエンドな、メリーバッドエンドだったのかもしれない。
 だからアミレスは今になってこんなにも意思を見せるの? 皇帝とフリードルを殺さないでと……あの二人に愛されたいと、そう私に訴えかけるの?
 私が、あの二人の存在を不要としたから──。